Dentalism39号
9/40

7 Dentalism 39 MAY 2020ニュアルの重要性は特に高まるのではないでしょうか。その方がスタッフも働きやすいと思うんです。私が他の先生方によく言うのは、例えば、私はエムズ歯科であれば最高のパフォーマンスが発揮できます。しかし、他のクリニックに行った場合は、少なくとも初日から数日間はなかなか思うように動くことが出来ないでしょう。そのクリニックのやり方が分かりませんから。しかし、そのクリニックにマニュアルがあって事前に渡されていれば、最初から100%に近いパフォーマンスを発揮できるかもしれません。これは私だけでなく、誰にでも言えることではないでしょうか。このように、マニュアルはそのクリニックの考え方ややり方を文書化しておくというもので何も特別なものではないのです。――具体的にマニュアルの内容はどのようなものでしょうか?荒井 有給休暇をどうやって取得するのかなどの就業規則を記したレギュレーションマニュアル、治療方針や治療の流れなどを記した歯科医師向けのDRマニュアル、同じように歯科衛生士向けの必要事項をまとめたDHマニュアル、歯科助手のためのDAマニュアル、受付スタッフのためのREマニュアルなど、多岐にわたっています。ただ、技術的な内容はそれほどなく、エムズ歯科クリニックの考え方の指標という感じですね。例えば、抜歯をするのが上手な先生と普通の先生がいるとします。全ての歯科医師が同じレベルの技術を持っているわけではないので、ある程度の差は仕方がないことですし、それは個人個人が努力するしかありません。しかし、この先生は抜歯をするけどこの先生は経過観察というように診断が変わってしまうことはあってはいけないと思うんですよ。少なくともその部分は同じクリニックで統一されてなければいけません。その統一基準を示すのもマニュアルなんです。――マニュアルによって標準的なレベルアップが図れる一方、それに縛られるデメリットはありませんか?荒井 私自身、マニュアルをそのようなものと考えていません。たとえ、優れたマニュアルを作ったとしても、現実にその通りにいくとは限りませんし、自分で考えて判断しなければいけないことばかりでしょう。そういう迷ったときに立ち返ることができる羅針盤のようなものだと考えています。――マニュアルはどのようにして作られたのですか?荒井 勤務医時代から開業したときのことを想像して書き始めていました。まず、目次だけ書いて冊子のかたちにしておいて、内容が書かれていない本のようなものを作ったんです。あとは気になった時にその都度で内容を書き加えていく。開業して17年になりますが、今でも毎日のように書き続けています。――では、ある意味まだ未完成ということですか?荒井 マニュアルには完璧なものもないですし、完成することはないと思っています。学会の診療ガイドラインなども改訂されますが、それと同じように私たちのマニュアルも更新していかなければいけません。しかも、マニュアルは作ることが目的ではなく、クリニックを機能させることが目的です。エムズ歯科クリニックのマニュアルを使わせてくださいと言われることもありますが、トップの考え方や環境なども違いますから、そのままうちのマニュアルを使っても機能しないでしょう。――人や環境が違う以上、他院のやり方を参考に出来ても、そのまま真似することは出来ないというわけですね。荒井 ですから、自分のクリニックに合ったマニュアルを作り上げていくしかないと思います。重要なのは、スタッフのモチベーションを上げて、全員がどれだけ同じ価値観を共有して仕事ができるか。ワンチームで成功に向かっていくことが大切だと思います。――東京と神奈川で9院を展開されておりますが、スタッフの管理やグループ内の連携など、大変な面もあるかと思いますが。荒井 9院ありますが、その中でも東京と神奈川にチーム分けをして、それぞれのチームを一つのクリニックとして考えています。その上で同じマニュアルを基に動いていますから、特に連携面で支障をきたすことはありません。また、スタッフは一つのクリニックにとどまるわけ東京、神奈川の大都市近郊の住宅地にて、地域密着型の歯科医院を9院展開している『エムズ歯科クリニック』。どの歯科医院、どの担当スタッフでも最新で最良の歯科治療を提供するため、マニュアルを用いた教育を徹底し、患者満足を追求している。

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る