Dentalism39号
22/40

Dentalism 39 MAY 2020 20高齢化社会で注目される口腔カンジダ症の最新事情近年、高齢化社会に伴い、口腔カンジダ症が増加してきていると言われている。口腔カンジダ症は高齢者が罹患しやすい疾患として知られているが、症状の多様化などにより医療機関でも見過ごされるケースも多いという。長年、ドライマウス外来にて口腔カンジダ症を診てきた大阪大学大学院歯学研究科の阪井丘芳教授に事情を伺った。││阪井先生は口腔カンジダ症の患者さんを多く診られているそうですが。阪井 私が診療を担当しております顎口腔機能治療部では、ドライマウス外来を開設しております。ドライマウスの患者さんは、唾液の分泌が少なく口の中が渇いた状態になっていますが、唾液が減ると口の中は酸性に傾きます。そうすると、カビの一種であるカンジダが増えやすくなるのです。このようにドライマウスと口腔カンジダ症には密接な関係があることから、ドライマウス外来に来られた患者さんはほぼ全ての方に口腔カンジダ症の培養検査をさせていただいておりまして、実際に罹患されている患者さんも多くおられます。││患者さん自身も、口腔カンジ方ない」と様子見になったそうです。ですが、どんどん食欲がなくなっていき、とうとううつ病の薬を処方されるとなったときに、たまたま私が知っている歯科医院に行かれて、そこの先生が「阪井先生のところで診てもらったら分かるかもしれない」と、紹介状を書いてダ症と気付かずに来院されている方が多いということですか。阪井 そうです。口の渇きや痛み、ひび割れ、色の変化、あるいは摂食機能の問題を訴えて来院されると、ドライマウスに口腔カンジダ症を伴っているケースが多いです。ですから、ドライマウスの対応をしながら口腔カンジダ症にも対応していっているという感じです。││口腔カンジダ症はそれほど気付きにくいものなのでしょうか。阪井 昔のように白っぽい米糠のようなものが口腔粘膜にべったりついているような症状が出ていれば分かりやすいですが、違和感や痛みだけでは気づかれない場合が多いようです。そもそも、患者さん自体が口腔カンジダ症を知っているケースも少ないですから。││そういった症状を放っておくとどうなるのですか?阪井 痛みのために食欲がなくなったり、味がわかりにくくなったり日常生活にも支障が出てきます。特に高齢の方が食べられなくなってくると、様々な影響が出てきますので要注意です。││食べることに影響するのは高齢者にとっては大きなことですね。阪井 ですから、的確に診断して治療につなげることが大切になってきます。実際に、私の患者さんであった話なのですが、80歳前後の男性で、口が渇いたりする違和感のせいでだんだん食べることが億劫になり食欲がなくなってきたということで内科や耳鼻科、歯科に行ってみたと。内科では、「老人性のうつ病だろう、年齢のせいだから仕大阪大学大学院歯学研究科大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部所属 さかい たかよし阪井丘芳 教授20年以上前から唾液腺やドライマウスの研究に従事。2003年にはイギリスの科学雑誌『Nature』、2010年にはアメリカの科学雑誌『Science』に論文が掲載。NIH(アメリカ国立衛生研究所)との共同研究も行っている。送ってこられました。そうしたら、口の中が真っ赤で、口の両サイドの角が割れていて、舌はツルツルの状態。まさに口腔カンジダ症の症状だったのです。││内科医や歯科医でも分からづらいものなのですね。79歳男性。3年前より口の周囲と舌が赤くなり、痛みを覚える。かかりつけ内科医、歯科医、耳鼻咽喉科医に相談するも原因がわからず悩んでいたが、阪井先生による口腔カンジダ症との診断、ミコナゾール製剤の処方により快方に向かう。意外に見落としやすい口腔カンジダ症初診時4週間後

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る