Dentalism39号
16/40

Dentalism 39 MAY 2020 14嚥下障害がある方とない方でも全く違います。例えば口腔ケアの場合、落とした汚れを出さなければいけませんが、まず嚥下障害のある方はうがいをして汚れを出すことが出来ません。うがいらしきことをしていても、口の中に残った細菌がそのまま喉に落ちていき誤嚥するわけです。ですから、嚥下障害のある方への口腔ケアは、ケア後に必ず吸引をしなければなりません。実際、嚥下障害の方に口腔ケアをしたばっかりに誤嚥性肺炎になってしまう例もあるようです。――知識の有無で大変なことになってしまう場合もあるのですね。他にはどのようなことをされていますか?松宮 コミュニケーションを取れる方ですと、まずは喉の筋肉を鍛えるシャキアエクササイズや嚥下おでこ体操を指導したりしています。また、当院の特徴として、各種電気刺激装置を用いた嚥下ニューロリハビリテーションを積極的に取り入れています。これは、神経に電気刺激を与えることで、喉の感覚を良くしたり、筋肉の動きを良くするというもので、世界でも注目されているリハビリテーション療法形になってきているように思います。――医科歯科連携や多職種連携は今後の医療にとっても課題となっていますが、うまくいく秘訣などはあるのでしょうか。松宮 まずは、医科歯科連携が課題だと言っていること自体がダメなような気がするんです。そこにハードルがあるという風に言っているようなものですから。そういう意識はない方が良いのではないでしょうか。連携を取ってみると、意外と医科も歯科も「勝手に垣根を作っていただけだ」となるような気がします。――実際にはどのような訪問診療を行っているのでしょうか?松宮 要介護状態の方は嚥下障害に加え、栄養障害を抱えていることが多いですので、初診時に必ず栄養状態や基礎代謝量など全身の状態を確認します。栄養状態が悪かった場合には、飲み込みがどうのこうのよりも先に栄養介入に入ります。そこから嚥下治療と栄養介入を同時に行っていくわけです。――嚥下治療やリハビリを行うにしても、全身の状態が関係してくるのですね。松宮 栄養状態を含め、まずは全身がリハビリや治療をできる状態にしていくことが大切です。最近、リハビリテーション栄養という言葉を聞くようになってきましたが、低栄養状態でいくらリハビリをやっても、十分な効果を得られないばかりか逆効果になることもあるんです。逆に、栄養量のみ増加しても今度は筋肉量が低下していきますから。私たちは歯科だけでなく医科も標榜しておりますが、それはなぜかと言いますと、患者さんの栄養管理だったり栄養指導をやっていかなければいけないからなのです。――そこまで密接な関係があるとは知りませんでした。医科を標榜されている意味合いはそこなのですね。松宮 あと、地域の皆様に対して窓口を広げて、相談しやすいようにという考えもあります。嚥下治療・リハビリの窓口だけでなく、地域の栄養ケアステーションとして、栄養障害の改善や栄養指導をしますという風に窓口を広げてあげると、「最近食べられなくなってきた」とか、「食べてるだけど痩せてきた」というような相談もされやすくなりますから。――ニーズの掘り起こしにもなりますね。嚥下リハビリでは具体的にどのようなことをされているのですか?松宮 もちろん口腔ケアは必須です。ただ口腔ケアと言っても、やはり外来と訪問では違いますし、――それぞれの職種が連携することによって、より効率の良い診療が出来るようになったということですね。松宮 これまでの2年間の活動で、嚥下治療に関する理解が地域に広まってきたように感じています。最近では、地域の病院から、「今度、こういう患者さんが退院します」という情報が集まるようになってきまして、病院のスタッフさんやケアマネージャーさんと、在宅ではどういうケアをしていこうかという退院時カンファレンスを行うまでになりました。多職種での地域包括ケアシステムという面ではとても良い

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る