Dentalism39号
15/40

13 Dentalism 39 MAY 2020リニックということで、開業する際に心配はございませんでしたか?松宮 開業前は周りからも「経営が成り立つのか」と心配されましたが、私自身は必ず成功できると思っていました。ニーズは必ずあるはず、これまではそのニーズを掘り起こせてないだけだと。ただ、それには準備も必要だと考えておりまして、まず開業する3カ月前にから地域連携室を作って、私たちのクリニックはこういうことが出来ますという啓蒙活動を、ケアマネージャーさんの事務所や基幹病院に向けて徹底的に行いました。――まずは、嚥下治療の大切さを啓蒙し、クリニックの認知度を上げようと思われたわけですね。松宮 そうです。特に、在宅での嚥下治療となりますと、ケアマネージャーさんが重要なポイントだと考えていました。ケアマネージャーさんは患者さんを引き受けたときにヒアリングをされます。その際、患者さんが最近飲み込みづらくなってきたと感じていても、「年齢のせいでしょうがない」とあえてそれを言うことはありません。また、ケアマネージャーさんも、患者さんが薬を飲み込めなくなってきたとしても、「年齢のせい」とそこで終わってしまう場合が多いのです。つまり、そこにニーズがあるのに掘り起こせてないわけです。まずは、そういった嚥下障害も対応ができるということ知ってもらわないといけないと考えました。さらには、ケアマネージャーさんがご家族と相談して患者さんのケアプランを立てていくときに、「どこに診てもらおうか」という話になるのですが、その選択肢に入れてもらわないといけません。ですから、実際にケアマネージャーさんの事務所に足繁く出向いたり、何度も勉強会を開催したり、自院の紹介をはじめ嚥下リハビリの必要性や効果について説明して回ったわけです。――現在はどれぐらいの患者さんがいらっしゃるのですか?松宮 患者さんの数は約500名で、外来診療が1、訪問診療が3の比率です。訪問診療で嚥下治療やリハビリを行う場合、お一人あたり少なくとも45分は取るようにしていますので、大体一人のドクターが訪問診療で診ることができる患者さんは1日8人ぐらい。在宅専門歯科や内科の在宅クリニックより訪問数はかなり少ないですが、お一人にかける時間を優先しています。ご本人やご家族に摂食状況をお聞きしたり、バイタルのチェックをしたり、治療を行うにしてもその態勢に持っていくまでに時間がかかりますから、時間はいくらあっても足りないぐらいです。――外来診療のようにチェアに座ってもらって診療をするわけではないですから、大変な部分もありますね。松宮 しかも、開業当初は歯科医師、歯科衛生士、医師、看護師、管理栄養士が一つのチームになって訪問しておりました。府中市、調布市、三鷹市を中心に、遠いところでは渋谷区の初台まで訪問していますので、全てのスタッフを連れて行くとなるととても大変だったんです。ですが、開業から3年目で、ようやく外部の医療機関とスムーズに連携が取れるようになりまして、私たちとしてもより身軽に動けるようになり、嚥下障害を専門に診ることが出来るようになりました。高齢者でも車イスに乗ったまま、駐車場から検査室や診察室に入れるように設計されたクリニック。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る