Dentalism39号
11/40

注目の歯科医師インタビュー9 Dentalism 39 MAY 2020Prole 荒井昌海(あらい・まさみ)1999年 東京医科歯科大学歯学部卒業2003年 東中野にてエムズ歯科クリニック 開院2004年 医療法人社団 翔舞会 理事長就任2011年 スタディグループMID-G創立医療法人社団 翔舞会 エムズ歯科クリニックhttps://ms-dental.com/荒井先生が主宰するMID-Gは、毎年全コースの定員が埋まり、延べ2000人以上が卒業しているスタディグループ。MID-Gについてお聞きいたします。どのような経緯で創立されたのでしょうか?荒井 2009年にニューヨーク大学のインプラントCEコースを受講していたのですが、その時に同じく参加していた4人の先生方と一緒に始めることにしたんです。――どのようなことを目的に創立されたのですか?荒井 私たちは、最高の歯科診療を患者さんに提供するには診療に専念できる環境作りが大切だと考えています。環境を整えるためには、学術、教育、経営の3つの柱が必要です。ですから、この三本柱を学ぶ場を提供したいとスタートさせました。――数あるスタディグループの中でも、経営に関する教育を掲げているところは珍しいですね。ただ、実際のところ診療面ではなく、経営やマネジメント面で悩まれている開業医の方は多いと思います。荒井 とかく歯科医師は職人的な方が多いと思いますが、開業医であれば経営のことも学ばなくてはなりません。人を雇う立場であれば当然、労働基準法を分かっていなければいけませんし、決算書も読めなければいけないでしょう。さらに、医療法も把握しておかなければいけませんし、医療広告ガイドラインも知っておかなければならないでしょう。例えば、歯科医院のプロポーションで言いますと、収入のうち人件費を何パーセント、家賃を何パーセントにしてという全国的な平均値が頭に入っている開業医の先生はどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。歯の平均値は分かっているんです、高さが何ミリだとか。しかし、人件費の平均値や技工料の平均値は知っている方は少ないのではないでしょうか。――歯科医師としてだけでなく、経営者として知っておかなければいけないことが本当にたくさんあるわけですね。荒井 少なくとも経営に関連する法律は全て知っておかなければいけないと思います。あと、財務や経理の面でも知っておかなければいけないエビデンスはいくつもあります。また、スタッフ教育については、先ほどお話しました通りマニュアルが必要です。マニュアルを書いていないと再現性がありませんから、治療と一緒で。私が書いたマニュアルが50冊ぐらいあるのですが、MID-Gではそのうちのメインの6冊をアレンジして自分のクリニック用に作ってもらいます。学術に関しては、色々な勉強の方法を実践しているのですが、ウェブ端末を通して学習できるオンライン受講システムに力を入れています。――いわゆるeラーニングということですね。荒井 そうです。すでに500本ぐらい動画を制作しています。セミナーを受講したいけど、時間的にも金銭的にも都心まで行くのが難しい先生方は多くいらっしゃるでしょう。そういった方も含めて、なるべく多くの方にご覧いただきたいと思いまして。また、昨年からMID-Gの総会もインターネットでライブ配信いたしまして、今年は約8300人に視聴していただきました。100社近くある賛助会員の企業様と連携して出来ることもたくさんあると思います。これからも、全く新しいことはもちろんですが、これまでにやってきたようなことも今までにない角度からやっていきたいですね。――学術、教育、経営の全ての面を教えてくれるスタディグループはなかなかないと思います。荒井 学術だけでも、教育だけでも、経営だけでも、もしくはそのうちの二つだけでもダメなんです。逆に、MID-Gと言うと経営や教育面が取り沙汰されることが多いですが、学術面も同じように力を入れています。3つの柱のうちどれか1本欠けても歯科医院として成功しないですから。これから開業される先生にはうまくいってほしいと思いますし、さらにはこれから卒業してくる人たちが希望を持って歯科医師をやってもらいたいですし、もっと言えば、現在高校に通っている人たちが歯科医師になりたいと思えるような業界にしていければいいなと思います。 エムズ歯科クリニックやスタディグループMID-Gでの様々な取り組みは全て、患者さんに最良の歯科医療を提供するため。荒井先生はその確固たる目的のために、既存の概念にとらわれることなく新たなことに挑戦し続けている。歯科業界に新たな風を吹き込む彼の目は常に先を見据えている。

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る