Dentalism38号
37/40

35Dentalism 38 MARCH 2020歯磨きの頻度が心不全リスク低下と関連 韓国・Ewha Womans UniversityのTae-Jin Song氏らは、韓国の国民健康保険データを用いて中高年約16万人を解析。その結果、歯磨きの頻度と心房細動(AF)および心不全リスクの低下に関連が認められたとEur J Prev Cardiol(2019年12月1日オンライン版)に報告した。1日3回以上の歯磨きで心不全リスク12%低下 これまでの研究で、口腔衛生の不良は血中への細菌侵入に起因する全身性炎症に結び付くこと、炎症はAFと心不全のリスクを上昇させることが分かっている。そこでSong氏らは、口腔衛生とこれら2つの心疾患発症との関連を検討した。 韓国の国民健康保険データから、AFと心不全の既往がなく2003~04年に定期健診を受けた16万1286人(40~79歳)を登録し、後ろ向きコホート研究を実施。身長、体重、臨床検査値、既往歴、生活習慣、口腔衛生に関する行動について情報を収集した。中央値で10・5年の追跡期間中に、4911人(3・0%)がAFを、7971人(4・9%)が心不全を発症した。 解析の結果、1日3回以上の歯磨きはAFリスクの10%低下〔ハザード比(HR)0・90、95%CI 0・83~0・98〕、心不全リスクの12%低下(同0・88、0・82~0・94)と関連していた。口腔衛生と両疾患との間には、年齢、性、社会経済的状態、定期的な運動、アルコール摂取、BMI、併存疾患(高血圧など)といった交絡因子を調整後も独立した関連が維持された。 専門家による口腔ケアと心不全の間には負の相関(HR 0・93、95%CI 0・88~0・99)、歯の喪失数22本以上と心不全の間には正の相関(同1・32、1・11~1・56)がそれぞれ認められた。 同研究は背景機序について検討していないが、想定される機序の1つとして、頻繁な歯磨きが歯肉縁下の細菌バイオフィルムを減少させ、細菌の血流侵入を予防したことが挙げられる。同氏は「今回の解析は、単一国における観察研究のため因果関係を証明できないものの、大規模集団を長期間追跡したという強みがある」と述べている。(Medical Tribune 2020年1月23日号9ページより転載) Medical Tribune紙:1968年にわが国で唯一の週刊医学新聞として創刊されました。各種医学会取材による最新医学情報をはじめ、専門家へのインタビュー記事、解説記事など、研究や日常診療に役立つ情報を提供しているジャーナル

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る