Dentalism38号
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菊地 理論的には、マイナス160℃で冷凍保存すると半永久的に可能となるのですが、世界的に見ても50年も100年も保管しておいた事例はないので、しっかりと確認しながら進めていこうと思っています。――自分の歯髄幹細胞を培養して、自分に移植するということですが、将来的には他人の歯髄幹細胞を使用することもできるのでしょうか?菊地 まず第一段階として、自己の歯髄幹細胞を自分に移植する自家移植を考えています。ただ、自分の歯髄幹細胞を使用するには前もって保管しておかなければなりません。親知らずや不用歯がない人に対する次のステップとして、二親等までの移植適応の拡大を目指して研究を進めています。例えば、おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんの乳歯の歯髄幹細胞を使えるようになればと考えています。――やはり血縁関係の方が移植しやすいのですか?菊地 現在、犬での研究では、DLA(人ではHLA)をしっかりと合わせなくても歯髄の再生が出来ることが確認出来ているのですが、万が一のことを考えると、ある程度HLAの形が近い中での移植、まずは血縁関係を対象とした移植が安全だろうと考えています。親子関係ですと、最低でもHLAが半分、うまくいけば全て合っている場合がありますから。――不用歯であれば、どんな歯の幹細胞でも使えるのですか? 例えば、虫歯になってしまった歯でも大丈夫なのかとか。菊地 虫歯の程度にもよりますが、感染が歯髄に達していないものであれば可能と考えています。ただ、長期に保管をしたり新たに人体に移植するものですから、できるだけ清潔な状態で送っていただく必要があります。弊社が指定させていただく消毒や保管、送付の手順に従って行っていただかないといけません。――高齢の方の歯でも大丈夫なのでしょうか?菊地 高齢者の場合ですと、幹細胞自体が少なくなっていたり、活性が弱くなっていることがあります。ただ、幹細胞の状態は人それぞれ異なりますので、一概に年齢制限を設けるということはしていません。現在、高齢の方の自家移植についても研究を進めているところです。――患者さんの費用はどれぐらいになるのでしょうか?菊地 再生医療と言うと、何百万円もするようなイメージがありますが、健康長寿社会に貢献Dentalism 38 MARCH 202022根管内に歯髄幹細胞と遊走因子G-CSFを移植する。抜髄後、根管内を除菌する。歯髄幹細胞を採取・培養歯髄再生のメカニズム培養加工室では、空調や清浄度も徹底管理されている。歯髄幹細胞は専用タンクで保管。

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