歯に移植するという治療になります。移植した幹細胞はそのまま歯髄になるわけではなく、幹細胞が血管や神経を誘導する色々な因子を出していて、それにより歯髄が再生されていくというメカニズムです。歯髄が再生されてきますと、自然治癒力が上がることで歯髄の周りに象牙芽細胞が出来上がり象牙質が再生されます。その後、再生された象牙質が元々ある象牙質とくっつくことで蓋をして再感染を防ぎます。――エナメル質は再生されないのですか?菊地 エナメル質の再生は現在の技術をもってしても非常に難しく、まだ実現できていない状況です。例えば、形が変わってしまって噛み合わせに影響が出てしまったりすることも考えられます。ただ、エナメル質の再生まで実現出来れば、歯そのものが再生出来るということになりますので、今後もそこを目指して研究を続けていきたいと考えています。――抜けた乳歯や親知らずなどから歯髄幹細胞を採取できるのは、他の再生医療と違ってメリットがありますね。菊地 そうですね。脂肪ですと吸引しなければいけませんし、骨髄であれば経皮的に針をさして採取しなければならないなど、どうしても痛みが伴ってしまいます。その点、抜けてしまう乳歯などであれば、簡易に採取することができます。しかも、歯髄幹細胞は神経系の再生に適しているということが分かってきており、例えば脳梗塞や頸椎損傷等の病気の治療に関しても将来研究が進めば有効であると考えています。――実際の治療の流れを教えてください。菊地 まず歯科医院様の方で、歯髄再生治療を希望する患者様の不用歯を抜いていただき、専用容器に入れて当社に送っていただきます。その後、当社の施設で培養・加工した歯髄幹細胞を歯科医院様にお届けいたしますので、それを患者様に移植していただくという流れです。――治療には特別な技術は必要なのですか?菊地 いえ、特別な技術は必要ありません。培養した幹細胞に薬剤を混ぜる作業が必要ですが、治療自体は根管内を充填材等で充填する代わりに幹細胞を入れていただきます。予定では、この歯髄再生治療の導入を希望される先生方に講習を受けていだたき、技術ライセンスの認定を取得いただくことを考えています。移植方法、不用歯の送付方法、歯髄再生治療の機序など、注意点を説明させていただくような内容です。より多くの歯科医院様に歯髄再生治療を導入していただくため、可能な限り先生方のサポートをしていきたいと考えています。――歯髄幹細胞の培養はどのようにされるのですか?菊地 当社の歯髄細胞培養センターで、長年の研究による独自の方法で培養を行い、移植までは液体窒素を入れたタンクの中で冷凍保存します。――培養の期間はどれぐらいかかるのでしょうか?菊地 幹細胞の質や個人によって多少差はありますが、一カ月ぐらいを想定しています。――保管した幹細胞は将来どれぐらい先まで再生医療に使えるのでしょうか?21Dentalism 38 MARCH 2020来館者には映像やフリップによる歯髄再生治療の説明が行われる。抜歯した不用歯、培養した歯髄細胞は、感染防止など安全性確保のため専用のキャビネットを用い搬送。
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