Dentalism38号
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17Dentalism 38 MARCH 2020 高齢者の死因の中でも上位に入る誤嚥性肺炎。口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であることは、入院患者及び介護施設入居者を対象にした多くの研究で明らかにされている。しかし、要介護認定を受けておらず、入院や施設入居をしていない地域在住の高齢者における口腔衛生と誤嚥性肺炎の関連についての研究はこれまでなかった。 そんな中、東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授らのグループが65歳以上の地域在住高齢者約7万人を対象に調査を行った。対象者71227人のうち、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2・3%だった一方、毎日清掃しない人では3・0%だった。さらに、75歳以上の人に限ると、義歯を毎日清掃する人で過去1年間に肺炎を発症した人が2・9%であった一方、毎日清掃しない人では4・3%と、肺炎発症リスクが高くなった。 また、傾向スコアを用いた統計解析では、65歳以上の全対象者では義歯を毎日清掃しないことにより、肺炎リスクが1・3倍高く、75歳以上に限ると約1・6倍高くなることが示された。 これは、通常の歯に付着するプラーク同様、義歯の表面に付着するデンチャープラークも、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性を示している。相田准教授曰く、毎日義歯の清掃することはもちろん、定期的に歯科医院で義歯の状態のチェックを行い、家庭では取れない義歯の汚れを除去してもらうことも大切だという。この研究で示された義歯の清掃を含め、要介護状態にない地域在住高齢者の口腔衛生状態を清潔に保っていくことが、日本人全体の誤嚥性肺炎の発症を減らしていくことにつながると思われる。義歯の手入れを毎日しないと、過去1年の肺炎リスクが1.3倍に。■入れ歯の掃除頻度と過去1年間の肺炎発症との関連(n=71,227)(オッズ比)2.22.01.81.61.41.21.00.80.6毎日入れ歯の手入れをする毎日は入れ歯の手入れをしない(65歳以上全体対象)毎日は入れ歯の手入れをしない(75歳以上のみ)Ref.1.301.58**東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野相田潤 准教授歯科治療の結果を予測表示できるARを活用した診察用アプリが登場。 「拡張現実」と呼ばれ、現実の景色にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前の世界を仮想的に拡張するAR。スマホ用ゲームの大ヒットで話題となったが、医療分野での活用も注目されている。 Ivoclar Vivadentから発売されたipad専用診察用アプリ「IvoSmile」でもARを活用。患者の顔写真をもとに補綴物の装着をはじめ、審美修復等の治療結果を簡単にシミュレーションできるというもの。瞬時に治療後のイメージがipadに表示されるため、モックアップ等の説明がなくても患者の理解が得やすいうえにモチベーションの向上にもつながる。また、写真やシミュレーション結果を歯科技工士と共有することでスムーズなコミュニケーションが期待できそうだ。さらに、ホワイトニングのシミュレーション機能も搭載しており、患者それぞれの歯の形態にあったホワイトニング効果についてアドバイスしながらコンサルテーションを進めることができる。治療後のイメージがよりリアルに表現できることは、歯科医師にとっても患者にとってもメリットがあり、円滑なコミュニケーションの一助となるだろう。「IvoSmile」はApp Storeからダウンロードが可能。ダウンロード後、30日間は無料で試すことができる。個々の調整機能を使ってシミュレーションを行う。矢印ボールを左右に動かすとビフォー、アフターの確認が可能。頭型のテンプレートに合わせ最適な距離で撮影を行う。問い合わせ/Ivoclar Vivadent株式会社蘂03-6801-1301https://www.ivoclarvivadent.com/jp/ivosmile

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