Dentalism38号
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13Dentalism 38 MARCH 2020ような建築にしました。――空間が広々としていますし、天井が高く開放感があります。回遊性を持たせた効率的な動線でスタッフさんも動きやすそうですね。羽尾 どうしても空間が狭いと患者さんも息苦しくなりますからね。天井が高いと暖房や冷房も効きづらいですし無駄も多いですが、患者さんファーストですから。あと、増築してスタッフルームを大きくしたことも良かったですね。やはりスタッフあっての歯科医院ですから。――これは羽尾先生のアイデアですか?羽尾 歯科技工士をしていた母が建築設計に興味があり、一緒に考えてくれたんです。歯科医師や歯科技工士の目線で、どうしたら患者さんやスタッフが快適に過ごせるのか、真剣に考えました。――お母様も歯科関係のお仕事だったのですね。羽尾 父も姉も歯科医師で歯科一家なんです。私が歯科医師になろうと思ったのも父の影響でした。痛みでしかめっ面をしていた患者さんを笑顔にさせて、しかも「ありがとう」と感謝される父を見ていて、子供ながらに歯科医師はなんて素晴らしい職業なんだと思っていました。――予防中心の診療を展開されているとのことですが。羽尾 学生時代にアメリカに行って色々な歯科医院を見学したことがありまして影響を受けました。アメリカの一般的な歯科医院では歯科衛生士によるメンテナンスが中心で、治療は専門医に紹介するだけ。GPは白衣にワイシャツという姿で院内を見回るというスタイルだったんです。メンテナンスだけなので、スタッフも患者さんもみんな笑顔だということが印象に残りました。日本の歯科医院では、患者さんも笑顔じゃないし歯科医師も笑顔じゃない。治療をしなくてもいいように予防をすれば、どちらも幸せになれると、メンテナンス中心の歯科医院にしたいと思うようになりました。ですが、最初から今のスタイルを実現出来たわけではないのです。オープン後はどうしても経営を成り立たせなければいけないという焦りと、おかげ様で多くの患者さんに来ていただいたこともあり、ただひたすら来られた患者さんの虫歯や歯周病を治療する毎日。予防中心とはかけ離れたスタイルで、正直身も心も疲弊してしまっていました。――そのような毎日の中、どのように今の予防中心のスタイルに変わっていったのですか?羽尾 忙しい日々の中、たまたま見た歯科衛生士向けの雑誌に、フィリピンで歯科ボランティアを行っているハロアルのことが載っていたんです。小さい頃から青年海外協力隊などの海外ボランティアに興味がありましたので、早速、代表の林先生にお電話して参加させていただきました。――ハロアルとはどういう活動なのですか?羽尾 フィリピンの特に貧困層が多い貧困地区に行きまして、歯科医療を提供したり、日本で集めた歯ブラシやタオル、固形石鹸など、物資の支援を行っています。――フィリピンの歯科事情はどのような感じなのでしょう。羽尾 貧困層では、中学校以降の教育を受けられない子供が多く、親もまたそうなので、歯ブラシの使い方すら知りません。現地では歯ブラシ1本がお米2㎏と同じ値段で、これは大人が1日に稼ぐ賃金の約半分です。お金がなくて歯ブラシを買えないですし、お金があったとしても歯ブラシよりお米を選んでしまう。そのような状況なので、ほとんどの子供たちは歯ブラシの存在すら知らないのです。ですから、虫歯だらけなのは言うまでもありません。――歯ブラシの存在すら知らない子供がいるとは、衝撃的ですね。羽尾 日本では考えられないでしょう。現地で歯ブラシを渡しても、使い方を知らないので、説明しなければヘアブラシのように使ってしまう子供もいますし、たとえ存在を知っていても売ってしまってお金に換えてしまう子もいるんです。しかも、現地では1日1食しか食べられない人が多く、慢性的に栄養状態が悪いため免疫力が低く虫歯の細菌が全身にまわって死んでしまう子供もいるんです。――虫歯で命を落としてしまうのですか?羽尾 フィリピンの場合は、日本(上)受付前には、院内セミナーを開催するために広々としたスペースを用意。(下左)気軽に入りやすい明るい外観。(下右)5年前に増築し作ったメンテナンス専用スペース。

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