Dentalism 38 MARCH 20208身の痰だとか唾液だとか粘膜が固形化して何層にもなっていたのです。健康な人であれば本来飲み込んでいる痰や唾液、粘膜が、飲み込めないので溜まっていってしまい、気管を塞いでしまうような状態でした。ですから、誤嚥で亡くなるというよりも窒息死のようなものなのです。――誤嚥ではなくて窒息ですか。それは衝撃的ですね。それをどう治療していくのですか?植田 固形化した粘膜に保湿剤のクリームを塗り、ふやけて柔らかくしたところで金属製の器具で剥がしていきます。そんなことを週に一度訪問してやっていたのです治療しますから来てくださいということになると、看護師さんが搬送してこなければいけませんし、治療後もまた搬送して戻らなければいけません。ましてや、治療が終わるまで看護師さんに待っていて下さいというのはとんでもない話で、一人の看護師さんが一人の患者さんに15分もべったりくっついていたらその病棟の看護業務は麻痺してしまいます。看護師さんが一人、病棟から欠員するということはそれだけ大きなことなのです。ですから、「私たちからから伺います。どうしても歯科診療室のユニットで治療しなければならない場合には、私たちで搬送します」と医科に働きかけました。摂食嚥下リハビリテーション外来の局員たちにも「白衣の下にびっしょり汗をかこうぜ」と。もう1日何往復したかわからないというぐらいに汗をかきました。それで一般的な歯科治療に加え、東京でやっていたような摂食機能療法を行っていくとその噂が広まり、上の病棟からも下の病棟からも依頼が来るようになったのです。――日本大学に戻られ、教育、研究、臨床の3つの目的を持つ全国初の摂食機能療法学講座を立ち上げられた経緯につきましては?植田 2004年に、母校である日本大学から摂食機能療法学講座を立ち上げるということでお声がかかりました。歯科大学でも摂食嚥下リハビリ外来だとか口腔リハビリテーション外来だとか診療科を持っているところは多いのですが、摂食機能療法の講座を開設したのは日本初。周りのスタッフもドクターも誰も教育を受けていない状況で、さらに、日本大学も医科病院と歯科病院の間の連絡通路には、「非常時以外通行しないで下さい」という立て札があって、まさに新潟のときにゼロベースで始めたのと全く同じ感じでした(笑) ただ、時代の流れや、これまでの経験があったので、東京都リハビリテーション病院で5年かかったことを新潟大学では3年、日本大学では1年でやり遂げることができました。――どこに行ってもやればやるほど結果が出るという感じで、摂食機能療法の大切さを感じます。これまででその重要性を感じたエピソードはございますか?植田 新潟大学にいたときに、特別養護老人ホームへの訪問診療をしていたのですが、1階が歩ける人、2階が車椅子を利用する人、3階が寝たきりの人というふうに、フロアによって患者さんが分けられていました。3階の寝たきりのフロアの方々は口から何も食べることが出来ず、鼻からチューブを入れて影響補給をしていたのですが、一切口から食べ物を入れていないはずなのに、3つのフロアの中で誤嚥性肺炎が一番多かったのです。そうなると、一体何を誤嚥しているのかという話になりますが、寝たきりの方たちの口の中を診たところ、これまた今まで見たことのないような状況でした。一切食べてもいないし話もしていないわけですから口腔が全く機能しておらず、ご自決めました。ただ、当時は摂食嚥下リハビリテーションなんて言葉自体が一般的でもなく、看板を掲げたら患者さんや医科からの依頼が来るというものではありませんでした。医学部病院と歯学部病院の間に連絡通路があるのですが、それまでは歩いている人なんか誰もいないという感じで、連絡通路の向こうは無歯科医師村みたいなものだったんです。ある時、たまたま医学部病院で歯が欠けて痛いという患者さんがいるということで、では自分たちが伺いますと。ただ、肺炎罹患回数口腔清掃と摂食・嚥下リハビリテーションの施行群(11名)の3年間における肺炎罹患回数経管栄養の療養者に対して、日々のセルフケアに加えて、週1回の専門職による口腔清掃とゼラリンゼリー摂取の介入を行った群は、3年間で肺炎罹患回数の現象を示した。口腔清掃のみの介入群は、減少傾向にあるものの統計学的に有意差は得られなかった。Ueda K, Yamada Y, Toyosato A, Nomura S, Saitho E(2004): Eects of functional training of dysphagia to prevent pneumonia for patients on tube feeding. Gerodontology 21, 108-1114321019992000P<0.052011年***
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