Dentalism37号
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25 Dentalism 37 WINTER 2019歯科治療前の骨粗鬆症治療薬医師の6割が不要な休薬に応じる 骨粗鬆症治療に関連する顎骨壊死対策について、顎骨壊死検討委員会※によるポジションペーパー2016では、抜歯前のビスホスホネート製剤または抗RANKL抗体デノスマブの休薬に根拠はないとされた。同委員会委員で松本歯科大学歯科放射線学講座主任教授の田口明氏は、以前に比べ減少しているものの、歯科医師からの不要な休薬依頼に応じる医師は6割超存在するとの調査結果を報告した。〔第21回日本骨粗鬆症学会(10月11〜13日)の2019年度骨粗鬆症至適療法(A-TOP)研究会での講演を基に構成〕ポジションペーパーの認知度が上昇 田口氏らは骨粗鬆症治療に関連する顎骨壊死について、A-TOP研究に参加する施設を対象として2014年に調査を行った〔調査期間10月16日〜12月31日、有効回答206施設(42%)、Calcif Tissue Int 2015; 97: 542-550〕。 昨年(2018年)も同様の調査を実施し〔調査期間4月23日〜5月18日、有効回答75施設(68%)〕、同氏らはその結果を前回と比較検討した。回答が得られた施設は整形外科が大半を占め、残りは内科および外科であった。ポジションペーパーを「知っている」と答えた医師は前回の76・2%(ポジションペーパー2010)に対し、今回は96・0%(同2016)と認知度が上がっていることが分かった。PTH製剤の休薬を依頼された医師も 自身の患者で「顎骨壊死の経験がある」との回答は、前回の11・2%に対し今回は24・0%であった。 患者の抜歯に際し、歯科医師から休薬の依頼があった薬剤は、前回同様ビスホスホネート製剤またはデノスマブ(73%)が最も多かった。その一方で、顎骨壊死との関連がない副甲状腺ホルモン(PTH)製剤の休薬を依頼された医師も存在した(27%)。 ポジションペーパー2016では、抜歯前にビスホスホネート製剤およびデノスマブの休薬は行わず、抗菌薬による感染症予防を行うことが盛り込まれた。今回の調査では、2016年以前に比べ抜歯前の休薬依頼が「減った」との回答は29・3%、「変わらない」が53・3%、「増えた」は17・3%。実際に休薬依頼に応じた医師は、前回に比べ減少していたものの、6割超に上ることが分かった。休薬を機に骨粗鬆症患者の治療を中止 今回、抜歯前の休薬中における有害事象の発生については、骨折、症状の悪化、骨密度の減少、顎骨壊死が報告され(表)、前回と変わらなかった。 休薬後の治療再開は78・7%、中止は18・0%と、前回(それぞれ83・8%、15・6%)に比べて再開が減少していた。この点について、田口氏は「休薬を機に患者が骨粗鬆症治療をやめたということだ」と説明。骨粗鬆症治療に対する患者教育の重要性を強調した。 医科歯科連携は着実に進んでおり、ビスホスホネート製剤またはデノスマブを投与する前に歯科医師に患者の口腔ケアを依頼すると答えた医師は、半数超に上った(図)。 以上の結果を踏まえ、同氏は医科歯科連携を歓迎する一方で、顎骨壊死との関連がないPTH製剤などの休薬依頼があったことを挙げ、歯科医師への教育が課題であるとした。※日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科放射線学会、日本歯周病学会、日本口腔外科学会、日本臨床口腔病理学会で構成(Medical Tribune 2019年11月21日号3ページより転載) 田口 明氏表 2018年調査の休薬期間(抜歯前)と  有害事象の関係抜歯前の平均休薬期間3カ月未満3カ月以上有害事象なし1621骨折14顎骨壊死10症状の悪化31骨密度の減少26無回答しない時々する必ずする2014年2018年020406080100(%)75.7%48.0%図 骨吸収抑制薬による骨粗鬆症治療前には  歯科医師による口腔ケアを依頼しますか?Medical Tribune紙:1968年にわが国で唯一の週刊医学新聞として創刊されました。各種医学会取材による最新医学情報をはじめ、専門家へのインタビュー記事、解説記事など、研究や日常診療に役立つ情報を提供しているジャーナル(表、図とも田口明氏提供)

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