Dentalism37号
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15 Dentalism 37 WINTER 2019発も必要かと思います。実は、高齢者やハンディキャップがある方用に、イオン歯ブラシで有名な『アイオニック』と共同で、「IONPA(イオンパ)」という、優しい振動で手磨き感覚で使える電動歯ブラシを開発しました。通常の電動歯ブラシは1分間に4〜50 ,000ぐらいの回転数なんですが、それでは圧が強すぎて使いづらいという人が多かったんです。でも、この「IONPA」は、本体から発生するマイナスイオンの効果で歯垢を落としますので、振動数が少なくても大丈夫です。不快感を持たれない振動数はどれぐらいで、じゃあ実際にその振動数で歯垢が取れるのかを繰り返し調べたところ、22 ,000回転ぐらいが一番良いのではないかと。その回転数でも手用歯ブラシより196%歯垢が取れるという結果が出ました。自分で使うにしても、ご家族が使って磨いてあげるにしても使い勝手が良いと思います。――おっしゃる通り、歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアだけでなく、セルフケアがしやすい方法を考えていくことも大切ですね。和泉 また、年を重ねてからの口腔ケアも大切ですが、子どものときからの予防も重要です。今、東京都学校歯科医会という小学校、中学校、高校の校医さんの会の学術顧問をしているのですが、私はそこで歯周病予防は小学校からと言っているんです。というのは、う蝕については1歳半から始まって3歳児検診があり、幼稚園に入っても小学校でもずっとチェックされていて、学校現場でう蝕は激減しています。しかし、歯周病についてはずっと放っておかれていると言いますかチェックされていないんです。ようやく、小学校から歯肉炎のチェックが始まったぐらいで。ですから、小学生のときから歯肉の検査もして歯周病の予防に努めるべきではないかと。現状、しっかりと歯茎まで磨けていない子供は歯肉炎になっています。それが中学校になると少し増え、高校になるともっと増えます。高校になって増えた歯肉炎をそのままにしていると、20代以降は検診というものがほとんどありません。そうして気付かずに放っておかれた間に歯肉炎から歯周炎に徐々に移行していくのです。現在は、歯磨きの指導もしっかりされていますから、しっかりとブラッシングが出来ている子は予防できるのですが、そうでない子は大人になって気付いたときにはかなりの歯周炎になっているケースも多いです。逆を言えば、小さい時から歯周病に関しても気をつけていれば大人になっても予防が可能になる。しかも、学校はみんなが集まって勉強していますから、そういうことを伝えるには最適な場所なんです。――う蝕だけでなく歯周病予防を小学校のうちから根付かせようということですね。和泉 そうです。全身疾患との関わりも伝えて口腔ケアの大切さを知ってもらうことが重要だと思います。それが普通のことになれば、8020どころか9020、10020でも実現できるかもしれません。口は全ての疾患の入り口という考えもありますし、会話をするにしても食事をするにしても、社会生活を営む上で大切な機能は全部口にあるわけですから、その機能がきちんと果たせるようにすることが歯科の一番の仕事だと思います。――和泉先生のこれからの展望を教えてください。和泉 今やらせていただいている周術期の口腔ケアをベースに臨床研究をしていけたらと考えています。例えば、がんの治療で化学療法をしている患者さんの口腔内の細菌叢はどう変わっていくのかとか、放射線を照射するとどう細菌が変わるのかだとか。お金もかかるし人手もかかるし大変なんですが(笑) 口の中はまだまだ分からないことだらけですから、これからも臨床をしながら研究も続けていきたいと思います。

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