Dentalism37号
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13 Dentalism 37 WINTER 2019きたと思いますが、ご自身で一番印象に残っている研究は何でしょうか?和泉 留学先のジュネーブ大学から日本に帰って鹿児島大学に移動したのですが、そこで古市保志助教授(当時)と早産・低体重児出産と歯周病との関係を調べたことです。切迫早産の妊婦さんの口腔内を調べ、血清中のサイトカインの分析などもして、口腔内がどういう状態になっていると切迫早産が起こりやすいかを明らかにしました。この研究そのものも印象深いのですが、これがきっかけとなって糖尿病など様々な全身疾患との関りも調べ始めたという点では、自分の中でも大きかったと思います。――最近では、侵襲性歯周炎の原因遺伝子についての研究が話題となりました。和泉 侵襲性歯周炎に関しては、慢性の歯周病と違って、家系内で発症したり、急速に進行するという特徴がありますから、やはり遺伝子レベルで何か問題があるのではないかということが指摘されていたのです。そこで、遺伝子レベルの解析で有名な東京医科歯科大学の田中敏博教授にご協力いただきまして調べたところ、NOD2という遺伝子に変異があることが分かりました。――遺伝子検査をすれば、侵襲性歯周炎になりやすい人がわかるということですか?和泉 それが一つの目標ですね。可能性が分かれば予防をすることもできます。ブラッシングをしっかりすることはもちろんですが、通常、半年に1回のペースで歯科医院にてスケーリングをしてもらうのを毎月にするとか。結局、細菌が歯面について残らなければ炎症は起こりませんから。リスクを減らすことができると思います。――現在は東京医科歯科大学の教授を退職されて、郡山市の総合南東北病院の口腔外科にて働かれているそうですが?和泉 昨年3月に東京医科歯科大学を退職いたしまして、その後、この総合南東北病院からお声をかけていただきました。――総合南東北病院では、どのようなことをされているのでしょうか?和泉 手術前後の周術期には口腔ケアが必要なんです。これまでの周術期の口腔ケアというと、清掃消毒をするだけだったのですが、そこに歯周病の治療も含められないかということでがん専門の瀬戸 晥一センター長からお声をかけていただきました。現在では、どこの病院でも周術期の口腔ケアを重要視されるようになってきましたが、特に総合南東北病院は早くから取り組んでおられまして、そのお手伝いをさせていただいているという感じです。昨年4月から12月までは週2回のペースで非常勤として来ていたんですが、今年の1月か和泉先生が勤めている郡山市の総合南東北病院。

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