Dentalism36号
23/36

21Dentalism 36 AUTUMN 2019ひとり親世帯の子どもは、歯の疾患やアレルギー性疾患の有病割合が高い。生活保護受給者への健康管理支援が2021年から全国の福祉事務所で開始される。しかし、子どもへの支援は必須ではなく、自治体により差が出かねない状況だ。そんな中、生活保護受給世帯ではアレルギー性疾患や歯の疾患がある子どもの割合が一般世帯の10倍以上になるとの研究結果が、東京大学大学院医学系研究科健康教育・社会学分野の近藤尚己准教授らの研究チームから発表された。対象は、2016年1月時点で生活保護を受給していた世帯の15歳未満の子ども573人。厚生労働省の国民生活基礎調査を基に同年代の状況と比較した。その結果、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、う蝕や歯肉炎などの歯の疾患などの有病割合は、一般家庭の子どもに比べ極めて高いことが判明。さらに、ひとり親世帯の場合は、ぜんそくが約1・9倍、アレルギー性鼻炎が約1・6倍、アトピー性皮膚炎が約4・2倍、歯の疾患が2・1倍多いことがわかった。経済的な困窮に加え、育児のストレスなどの影響が原因と考えられるが、近藤准教授は「比較したデータが異なるので一般世帯との比較データは参考値だが、生活保護受給世帯別のデータは十分比較できる。ひとり親世帯に対する追加的な支援を検討する必要があるかもしれない」としている。■ひとり親でない世帯に対するひとり親世帯の各疾病の有病オッズ比4.543.532.521.510.50非ひとり親世帯ぜんそくアレルギー性鼻炎アトピー性皮膚炎歯の疾患11..993.571..55744.4..2252.2..1オッズ比ひとひひとりとりり親親世世帯東京大学大学院医学系研究科健康教育・社会学分野近藤尚己 准教授近藤尚己(東京大学大学院)生活保護受給世帯の子どもにアレルギー性疾患や歯の疾患が多い. JAGES Press Release No.177-19-11がん細胞の遺伝子を調べ、患者ごとに最適な治療法を探る「がんゲノム医療」が本格的に動き出した。6月には、がんゲノム医療のための遺伝子パネル検査が保険適用となり、従来よりも安価に受けられるようになった。遺伝子パネル検査は、100種類以上のがん細胞の遺伝子を調べ、どの遺伝子に変異があるかどうかを解析するもの。がんの再発や進行で標準的な治療が受けられない患者や、小児や希少がんなどの一部の患者が対象となる。今回、保険適用となった遺伝子パネル検査は、シスメックスが国立がん研究センターと開発した「NCCオンコパネル」と、中外製薬の「ファウンデーションワンCDx」の2つ。公定価格はどちらも56万円で、保険適用となれば原則3割の負担で済む。その上、一カ月の自己負担の上限を定めた高額療養費制度を利用すればさらに費用を抑えられる。遺伝子パネル検査を受けられるのは、現在11ヵ所あるがんゲノム医療中核拠点病院、30数ヵ所が指定される予定のがんゲノム医療拠点病院、これらと連携する連携病院(約150ヵ所)。今後、対応可能な病院を増やしていく予定だが、遺伝子に詳しい専門医が限られているという現実もある。また、個人情報漏洩でのトラブルの可能性も否定できない。期待が大きい一方で、クリアしなければいけない課題も多い。遺伝子パネル検査の保険適用でがんゲノム医療が本格始動。

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る