――矯正学や咬合機能を専門にしたきっかけは何だったんですか?小野そもそも私が歯科の道を選んだのは完全に家庭環境の影響がありまして、父や伯父がこの東京医科歯科大学のOBだったんです。医学部へ行こうと考えたこともありましたが、当時は父の歯科医院を継がなければならないという事情がありましたので歯科の道を選びました。結局は、大学に残ることにしましたので継がなかったのですが(笑)――大学ではどのようなことを学ばれていたのですか?小野実は、学生の頃はあまり勉強をしていませんでした。というのも、その当時、東京医科歯科大学はボート部が強くて有名だったんです。歯科大学でオリンピック選手を輩出したところはなかったんですが、東京医科歯科大学のボート部はオリンピック選手を3人も輩出していましたから。私も憧れて入部したのですが、合宿が年間300日もあるんです。ですから、合宿所から大学に行って授業が終わったら合宿所に帰る毎日で、合宿所で暮らしているようなものでした。授業は受けているんですが、練習で疲れていて講義を聴くというような状態ではなくて、どちらかというと、授業で疲労を回復して夜の練習に備えるという感じで(笑)それで、大学時代に勉強できなかった分を大学院で頑張ろうと。――大学院では何を専攻されていDentalism 36 AUTUMN 201912取材・文/長田英一撮影/中島繁樹意外と分かっていない、咀嚼や呼吸などの口腔機能と脳や全身機能との関係とは!?昨年、咀嚼刺激の低下が記憶学習機能を障害するとの研究論文を発表し、世界でも注目を集めた東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史教授。咀嚼や呼吸といった口腔機能と脳や全身機能がどう関係しているのか。子供の記憶学習機能や高齢者の認知症リスクとの影響、スポーツにおけるパフォーマンス向上との関わりなど、口腔機能がどのように密接に関係しているのかを伺った。Special Interviewスペシャルインタビュー東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野教授小野卓史Takashi OnoProle 小野卓史(おの・たかし)1987年、東京医科歯科大学歯学部卒業。1991年、同大学歯学研究科修了。2010年より同大学大学院教授。同大歯学部附属病院で臨床にも携わり、副病院長として包括的なケアや診療を推進している。来年秋に横浜で開催される矯正歯科の国際学会の大会長も務める。
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