Dentalism35号
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27Dentalism 35 SUMMER 2019 ある日、突然やってくる歯科の個別指導の通知。対応を間違うと、歯科医師としても、歯科医院としても、致命的な打撃を受ける可能性があることから、歯科医師にとって心理的な負担は相当なものです。そこで個別指導への対応方法について、歯科医院の個別指導のサポートを行っている、鈴木陽介弁護士にお聞きしました。歯科医師の悩み、1位は個別指導Dental Tribune Japan(以下、DTJ) 弁護士として歯科の個別指導に力を入れるようになったのはなぜですか。鈴木氏 2013年に歯科の患者さんとのトラブル対応の書籍を出版したのを機に、歯科医師の相談を中心に取り組む決意をしました。今では全国の歯科医師から、さまざまな相談に応じています。当初は患者さんとのトラブル案件が中心だろうと考えていましたが、実際は行政対応、個別指導対応の相談が多いことに気がつき、力を入れるようになりました。歯科法務に強い弁護士に聞く歯科の個別指導、どう対応すればいい? 歯科医師の悩みトップ3を紹介します。 まず第3位が、税務調査の悩みです。基本的には税理士が対応する分野です。これから述べる他の2つの悩みに比べると、経営への影響は限定的と思います。 第2位が、患者さんやスタッフの悩みです。例えば、インプラント治療のミスで患者さんから訴えると言われた、あるいは、スタッフが突然職場に来なくなった、などのケースです。こちらについては、感情的な対応は避け、経済合理性を念頭に解決することが経営上の正しい判断です。 そして第1位が、厚生局による個別指導の悩みです。個別指導は、その結果いかんで、監査、そして保険医・保険医療機関の取消しなどの行政処分がなされ得ます。さらに、そうした事態を懸念しスタッフが退職するなど、経営に深刻な打撃を与えることがあります。私は、個別指導の対応サポートを日々行っており、良い結果になると、歯科医師にたいへん喜んでいただけるため、やりがいを感じています。仕組みを知れば怖くないDTJ 個別指導の通知を受けた歯科医師に、弁護士として一番伝えたいことは何ですか。鈴木氏 多くの歯科医師は、個別指導の正確な知識を持ち合わせていません。そのため、通知が届いた時点で過度に不安になり、あれこれ考えて眠れなくなってしまう方もいます。そこで私がお伝えしたいのは、個別指導に関する本などを読み、個別指導の仕組みを知ってほしいということ。知識があれば、冷静に対応できます。そうした歯科医師をサポートしたいと考え、今年の1月、『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法』(インターアクション)という書籍を上梓しました。個別指導の通知を受けたら一人で悩まずに、私のような弁護士、あるいは歯科医師会や保険医協会などに相談してほしいと思います。 もっと早く相談に来てくれていれば、個別指導が1回で終わり「経過観察」で済み、「監査」や監査の前段階である個別指導の「中断」などにならずに済んだと考えられるケースも過去にありました。 例えば、「カルテの提出」を求められたからと、自分のメモとして書いていたものと、レセコンから出したカルテの2種類を提出したことにより、いわゆる「二重カルテ」が疑われ、個別指導が中断されたケースがあります。中断後、私に相談に来られたのですが、その方はそもそも「1患者1カルテ」のルールを理解していなかったようで、これも個別指導の通知を受けた段階ですぐにご相談いただいていれば、適切な対応をアドバイスできたでしょう。専門家へ早めの相談をDTJ 個別指導をはじめ歯科の法律業務について、弁護士に相談するポイントは?鈴木氏 個別指導について申し上げますと、歯科医師の多くは、治療技術を磨くことに熱心で、よく勉強されています。しかし、保サンベル法律事務所鈴木 陽介(すずき・ようすけ)2011年にセンチュリー法律事務所から独立し、東京都新宿区四谷にサンベル法律事務所を開設。歯科医院法務に注力。歯科医師のための弁護士として、歯科医院側の立場で、個別指導、監査、医道審議会の行政処分や、歯科医院の法律業務全般に取り組んでいる。執筆活動のほか、歯科関連の豊富な講演実績がある。(お問合せ)サンベル法律事務所 http://www.sunbell.jp/ 蘂03-5925-8437険診療のルールについては、理解が不十分である方がいらっしゃいます。個別指導が「中断」、あるいは個別指導から「監査」となった場合、その時点からのご依頼では、結果としてはなかなか厳しいことがあります。つまり、個別指導の通知が届いてすぐの段階からご相談いただくと、より良い解決へとつながりますので、ぜひ早期に、相談してほしいと思います。  患者さんとのトラブルについては、歯科医師賠償責任保険で対応できることが多いのですが、保険を利用するかを含め、まずはトラブルが生じた時点で早めに弁護士に相談していただくと、適切な初期対応につながり、深刻なトラブルへの発展を回避することに結びつきます。お困りの際は、弁護士への早めの相談が、より良い結果へのポイントです。

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