Dentalism35号
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13Dentalism 35 SUMMER 2019ろ機能改善をそれほど望めません。食事の内容を変えたり介助方法を調整したり、環境ごと指導していくことが重要になります。――そうなると、外来診療だけですと限界がありますね?菊谷そうです。病院に入院されている方や介護施設に入居されている方であれば、食事を作ってくれるのも食事の介助も看護師や介護士がやってくれます。しかし、在宅の人たちの場合は、ほとんどの場合、奥様やご主人がご飯を作り介助もされています。外来診療の場合、普段食事を作られている奥様は足が悪くてクリニックには付いてこられず、週末休みを取ってくれた息子や娘さんが患者さんを連れてこられるケースが多いです。そうなると、息子さんや娘さんにいくら話を聞いても詳しい状況が聞けず役に立ちません。だから、ご自宅で食べている環境を見て指導するということが必要になってくるのです。これは通常の歯科医療においても同様で、「しっかり歯磨きをしてください」と患者さんに何度言っても、しない方はいつまでもしてくれないでしょう。そんなやり取りを外来診療でいくら続けても意味がありません。自宅に訪問したら、家の中がめちゃくちゃになっていて、カビがついた歯ブラシがあるというような現状を見て初めてその患者さんの問題が明らかになるのです。また、逆に在宅の患者さんを外来に連れてくる場合もございます。検査や抜歯など、在宅で出来ることは限られていますから。そういった外来と在宅の使い分けが歯科でも必要なのです。その点、医科ではそういった連携がとれています。外来患者さんの病歴などをプールしていて、その情報を取り込んでから在宅の診療を始めます。しかし、歯科は全く別々。在宅の患者さんは在宅の歯科医師しか診療しない。外来診療の歯科医師は患者さんが来れなくなったからって在宅で診ることはありませんし、情報の共有さえ出来ていません。まるで、在宅の患者さんと外来の患者さんが別に存在しているかのようです。私たちは、在宅の患者さんの診療を依頼されたら、外来時の主治医探しから始めます。主治医から情報を貰って、当院がやるケースもあれば、地域で在宅を頑張っている先生にお願いするケースもあります。これからの時代はそういった歯科同士の連携を当たり前のことにしていかなければならないでしょう。他職種連携がメディアで取り沙汰されていますが、現状は身内の連携、歯科歯科連携がとれていないのです。まずは、それぞれの地域での歯科歯科連係のモデルを確立させなければなりません。――そのようなモデルを確立させるためにはどのようなことが必要なのでしょうか?菊谷外来に通っている間は体も動きますので当然口も動く。口が動いていれば自浄作用が働きますので、口腔内はそこそこ綺麗になります。しかし、足腰が弱って体が動くなると急に口腔内の状況も悪化してきます。その上、体が動かないから外来にも通えず、キャンセルの連絡が入るようになる。結局、体の不自由さは口の不自由さに繋がりますから。本当は外来診療でそういうサインが出ているんです。もうそろそろこの患者さんは通院出来なくなるよと。しかし、外来の先生は、診療の最後の方の患者さんのイメージが、在「食べる」「話す」を目的に、口腔リハビリを専門に行っている。

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