Dentalism35号
14/32

――口腔リハビリに特化した『口腔リハビリテーション多摩クリニック』開設しようとした経緯を教えてください。菊谷まずは、嚥下障害の急性期、例えば脳卒中で倒れて嚥下障害になるとか、そういった場合のリハビリテーションに対応している病院は多いですし、医療制度上も手厚い保障があります。しかし、加齢や肺炎を繰り返すなどの原因で徐々に嚥下障害になっていく人たちに向けてのリハビリテーションの場はこれまで本当に少なかったのです。しかも、そういう方々はそのうち外来通院も出来なくなり、在宅で診なくてはいけなくなる場合が多いのですが、そこまでフォローできる医療機関もほとんどありませんでした。そういった、外来診療と訪問診療を繋げる医療モデルを確立したいというのが一番の目的ですね。あわせて、今後、地域包括ケアシステムが進んでいく中で、今の学生たちが開業したときに実際にどう地域と関わるのかということを教えていかなくてはいけません。私も含めた教員自らが体験し、学生たちに実際に見てもらうという日本歯科大学の教育機関としての役割もあります。――外来診療と訪問診療を繋ぐとはどういうことですか?菊谷嚥下障害の急性期や回復期の場合は、リハビリテーションにより患者さん自体の機能改善が期待できますが、私たちが診ている維持期や緩和期と呼ばれるステージにいらっしゃる方々は正直なとこDentalism 35 SUMMER 201912取材・文/長田英一撮影/中島繁樹高齢化社会においての地域と歯科との関わりのヒントは「噛めない患者」にあり。その理由とは!?高齢化社会が進む中、国をあげて地域包括ケアシステムの実現化に向けて動いている中、歯科界はその流れに乗り遅れていると語る菊谷氏。高齢者が噛めなくなった理由を咬合や義歯のせいにするという昔からの歯科界の固定観念が、その原因の一つだという。そんな中、昨年4月に保険導入された「口腔機能低下症」が、歯科界が地域包括ケアシステムに参画できるチャンスであり、歯科界の転換期だとする真意を伺った。Special Interviewスペシャルインタビュー日本歯科大学教授日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長菊谷武Takeshi KikutaniProle 菊谷武(きくたに・たけし)1988年、日本歯科大学歯学部卒業。1989年、日本歯科大学歯学部附属病院高齢者歯科診療科に入局。2012年に、世界初となる摂食・嚥下機能の診断と治療に特化した口腔リハビリテーション多摩クリニックを開設し、院長を務める。日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学 教授。

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る