Dentalism34号
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11Dentalism 34 SPRING 2019たちが従来の遺伝子研究とは違ったメタボローム解析を日本に持って帰ってきたんです。初めは、肝臓が対象のメタボローム解析ということで私には関係ないと思っていましたが、考えてみると、このメタボローム解析はどんな細胞でもどんな臓器であっても対象になるかなと。がん特有の代謝というものがあるのならば、それを見つけ出して何らかの検査法の開発に結びつけられたらと考えるようになったのです。平成16年ぐらいからメタボローム解析を取り入れ始めていたのですが、そのうちに唾液からでもがんの代謝物を測ることができるようだということが一緒に研究をしていた慶應大学の杉本先生から発表されました。それで山形県鶴岡にある慶應大学の代謝物を研究するチームと東京医大の臨床研究チームとの共同で、唾液のサンプルを集めての研究を始めたんです。そうすると、血液や尿と比べても唾液の方がより綺麗に代謝物の中のデータが取れたんですね。なぜそうなったかは色々議論があるのですが、血液には測定を邪魔する物質が多いのですが、唾液中にはそういうものがほとんどありません。それが良い方向に働いたのではないかというのが我々の推測です。――様々な方法論を試した上で、唾液が一番適していたということですね。砂村そうです。他にも遺伝子を用いた検査もありますが、研究にはがんの組織や細胞が必要になります。遺伝子研究は外科で切除した組織標本を用いておりますので、そういう研究サンプルはなかなか手に入りません。また、遺伝子検査は将来のがんリスクを推測するものですが、サリバチェッカーは検査を受けた時点でがんの疑いがあるかを調べるものですので、そういう点では全く違う検査だと言えます。また、検査の方法が唾液を採取するのみで、注射で血液を採取するというような痛い思いをする必要もないので、患者さんに与える負担が相当少なくなります。これはこのサリバチェッカーの大きな特長です。――サリバチェッカーの検査の仕組みを教えてください。砂村唾液に含まれるスペルミンやスペルジミンなどのポリアミン類と呼ばれる約10種類の代謝物質の濃度を測定して人工知能(AI)でトータルに評価します。ポリアミン類は細胞が増殖するときに必要な物質で、がんは絶えず細胞が増殖しますのでどうしてもポリアミン類が増えるという傾向があります。一つの物質ではなく複数の物質を使った人工知能によるリスク判定がサリバチェッカーの特徴で、これまでの腫瘍マーカーやアミノインデックスなどとも異なる部分ですね。複数の物質で評価することによって、一度の検査で、膵臓がん、大腸がん、乳がん、肺がん、口腔がんと5種類のがんのリスク判定をすることもできます。今後は胃がんや前立腺がん、膀胱がんなども間もなく検査できるようになると思いますし、卵巣がんや子宮がんのプロジェクトも進めていきたいと考えています。――サリバチェッカーのスクリーニング検査の精度はいかがでしょうか?砂村まだまだ症例が少ないので一概には言えないというのが正直なところです。ただ、既存の検査法に比べて有用だという面が多く山形県鶴岡市にあるラボで唾液の分析を行っている。

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