Dentalism32号
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7 Dentalism 32 AUTUMN 2018したらうちに来たら」という話をいただきまして、1年ちょっとですが働かせていただきました。その先生が日本大学のクラウン・ブリッジ学出身の方で、補綴にはかなり厳しくて、最初の半年ぐらいはずっと院長が削り終わった模型をワックスアップしていましたね。出来上がって先生に見せても、「全然ダメだ」と潰されたりとか、ユニットが6台ぐらいある歯科医院だったんですが印象が端から端まで飛んで来たり、とにかく厳しかったことを覚えています(笑)││でもそれが、先生の補綴の知識や技術のベースになっているわけですね。小池 そうだと思います。その歯科医院の近くに一人暮らしをしていたんですが、いわゆる内弟子みたいなかたちで目をかけていただきました。朝、院長のお宅に行って朝御飯を食べて一緒に出勤。帰りは院長が先に帰られるので、私は夜10時か11時まで歯科技工士さんと仕事をした後、また院長のお宅で夜御飯を食べて自宅に帰るという毎日でした。朝御飯が終ったら院長の御嬢さんを院長の車で送ったりもしていましたし、本当に芸人さんの師匠と弟子みたいな感じでしたね。今は全くこういうことはないでしょうけど、古き良き時代でした。そういうこともあって、短い期間でしたが強烈に印象に残っています。││かなり若くして開業されたそうですが、ご苦労はございませんでしたか?小池 祖父がやっていた歯科医院が空き家になっていたので、そのままにしておくのももったいないということで開業したのが26歳か27歳のときでした。右も左もわからない状態だったんですが、教科書通りに丁寧に仕事をしようと。稼がないといけないという気持ちもなかったので、総義歯などは教科書を見ながらコスト度外視で作ってましたね。幸いなことに祖父の歯科医院には技工室があったので、インレー、アンレー、クラウンまではワックスアップして一人でやってました。││CAD/CAMに傾倒していかれたのはいつ頃からですか?小池 元々、コンピューターが好きだったということもありますし、シロナさんのCERECを見たときに面白いなという感覚がありました。セラミックは作るのが結構大変だというイメージがあったので、それがこんなに簡単に出来るなんてと衝撃を受けたことを覚えています。あとは、当時で4番や5番を白くしたいとハイブリッドを選択した場合、例えば月収15万円ぐらいのOLさんが5、6万円出しても20年前のクオリティではすぐに黄色くなってしまう。それでCERECの方が良いんじゃないかと単純に思いました。当時で960万という高い買い物だったんですが、思い切って購入しました。それでどんどんはまっていって、現在は3台の異なるメーカーのCAD/CAMを使うまでになりました。││光学印象の勉強はどうやってされたのですか?小池 バイマイセルフです(笑) 当時は勉強するところもなかったですから。インターネットが普及し始めた頃で、海外の色んなサイトから情報をひろってきたりしてましたね。それがいきなり教える立場になってしまったので大変でした。診療を終えてからこんなものが出来るんじゃないか、あんなものが出来るんじゃないかと試行錯誤しながら本当に色々なことをやってましたね。例えば、今から12年ぐらい前に、横須賀市がベンチャー企業に対してアイデアを募集していたんですが、光学印象をインプラントに応用できるのではないかとCAD/CAMを使ったインプラントの低コスト化というテーマで企画書を出してみたんです。そしたら採用されて助成金をいただくことになってしまいました(笑)││それは凄いですね。長年、CAD/CAMを使われてきてそのメリットは何だと思われますか?小池 やはり、時間の効率化ですね。ご存知の通りこれまでの歯科補綴では、まずシリコンで型をとって歯科技工所に依頼をして、出来上がった補綴物を院内で被せるという流れで1、2週間かかっていました。それがその日のうちにファイナルなりプロビジョナルまで入れられ、しかも院内で完結できますから、これは大きいですよね。それから、カメラで撮影するだけなので嘔吐反射も少ないですし、時間短縮と同時に患者さんの負担も軽減できます。その上、オールセラミックですので生体親和性が高上/広々とした診療室。白を基調とし清潔感が漂う。左下/ドイツで見学した歯科医院をイメージしたという外観。 右下/技工室兼滅菌室。ミリングマシンを使い、その日のうちに補綴物を製作する。

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