Dentalism32号
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13 Dentalism 32 AUTUMN 20182年ぐらいですかね、糖尿病と歯周病の関連性だとか、脳血管障害、例えば心筋梗塞と歯周病の関連性だとか、全身疾患と歯周病との関連性が取り沙汰されるようになってきて自分の臨床と結びついてきたのは。これは不思議なことに連鎖反応みたいなところがあって、循環器内科の先生は心臓の面から歯の大事さや歯周病の怖さを訴え、糖尿病内科の先生は糖尿病の観点から訴え、脳神経外科の私は認知症の観点から訴える、そういう人間がなぜか同じ時期に出てくるんですよね。なぜ10年前に気が付かなかったかと言われると申し訳ないとしか言いようがないんですが。正直なところ、29年間医者をやってきて歯を診たことがなかったんです。喉は診てもその手前にある歯は診ていなかった。それで700人から800人ぐらいのうちの患者さんにアンケートをとったところ、驚くことに4人に1人は総入れ歯だったんです。それも50代とかなり早い段階から。これは口腔ケアを勧めようと思っても現実問題として歯自体がもうないじゃないかと。そんな中で、実際に患者さんのために具体的に行動しているクリニックがほとんどないという印象もあったので、やるからには徹底的にやろうと。それで、ちょうど外来診療施設に空いている部屋があったので、歯科用チェアを入れて歯科衛生士さんによるメンテナンスを始めたんです。具体的には、初診時の口腔チェックを主に、定期的な点検が必要な患者さんに関しては毎月行っています。――脳神経内科で口腔チェックということで、患者さんは驚かれるのではないですか?長谷川 脳のCTや問診だとかが終わって、「歯のチェックもお願いします」と言うと、やはり最初はびっくりされます。ただ最近は、患者さんも付き添いのご家族の方も全身疾患において歯が大事ということを薄々知っていらっしゃる方が多いので、すぐに納得されますね。逆に、「さすが認知症専門外来は違うな」という風に思われるようで、私共の認知症の診療のレベルがぐっと上がった気がします。――口腔のメンテナンスは有料でされているのですか?長谷川 よく聞かれるのですが、全く無料でやっています。私の指示のもと歯科衛生士さんがメンテナンスをして加算をとれないかと厚生局に聞いてみたんですけどやっぱりダメでした(笑) ――歯科衛生士によるメンテナンスを始めてみていかがですか?長谷川 やり始めると色々面白いことがありましたね。医科と歯科では全然見ているところが違うんですよ。歯科医院に行く人は、よっぽど虫歯が痛くて仕方がない人は別ですが、ある程度歯に関心があって意識が高い人だと思うんです。でも、世の中には歯の治療や口腔ケアを必要としている人が本当に沢山いらっしゃって、歯科の方が見ているのは氷山の一角だよと。先日、3年間入れ歯を外していないという患者さんが来院されまして、歯科衛生士さんがびっくりされていました。歯科医院に行くときは最低限口をゆすいだり歯を磨いていく人が多いと思いますが、その患者さんの口の中は残渣だらけ。そういう患者さんにもむし歯があるから治療してくださいとかここを治してくださいということばかり言っていたのでちょっと待ってくれ

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