Dentalism32号
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Dentalism 32 AUTUMN 2018 8く、金属アレルギーの心配もありません。それから、経験の浅い先生でも豊富な先生でも、一定レベルの治療ができるということが重要です。これは患者さんにとっては大きなことではないでしょうか。誤解を恐れずに言えば、私は医療というのは60点でいいと思っています。例えば、脳外科の先生で神の手を持つスーパードクターと言われている方がいらっしゃるじゃないですか。その先生自体を否定しているわけではありませんし、むしろ尊敬する方々なのですが、その方々の治療を受けられる患者さんはほんの一握りで、むしろ受けられない患者さんの方がほとんどだと思います。当然100点の先生は必要だと思うのですが、それよりも一定レベルの医療が全体に行き渡ることの方が重要だと思うんです。そこがデジタル化の根源的なメリットじゃないでしょうか。││逆を言えば、経験のある先生でも経験がそれほどない先生でも変わらなくなるということでしょうか?小池 それはあくまで補綴物の製作の部分だけの話で、診査診断の面ではどんなにAIが進化したところで今の段階では追いつかないでしょう。レントゲンの読影などはそのうち一定レベルの診査診断ができるようになるかもしれませんが、カウンセリングなどで患者さんが話す内容から診断の糸口を見つけるという部分になるとコンピューターでは難しいかと思います。││デジタル化が進む上で心配すべきことはありますでしょうか?小池 デジタル化というのは今まで難しかったものを簡単にするという側面があります。そういう意味で心配しているのは、ハードルが下がる分、ベーシックな部分がおざなりになるのではないかという懸念があります。例えば、セラミックのインレーやクラウンを作るにしても、今まであった1から10のプロセスが1から5までになっただけで、やはり原理原則を理解していないと良い結果は得られないと思います。お金儲けを出来る人はいるかもしれませんけど(笑) その点、経験値の高い先生はしっかりとしたアナログでの技術や知識をお持ちですから、やはりベーシックな部分で差が出てくると思います。あとは何でもかんでも自分でやりたがる先生がいらっしゃるのですが、「でも先生、そこは技工所に外注した方が技術的、コスト的に合うんじゃないの?」と思うことがあります。これまでは、インレー、アンレー、クラウンを歯科医院内で早く作れますし、外注するより低コストだというのが一つの売りでしたが、今はスキャンしたデータを技工所に送って作ってもらった方が効率を考えた場合に良い場合が多々あります。例えば、あるブロックは私たちが購入すると3800円ぐらいなんですが、自院で削って造成して焼かなければならないし、色も入れなければいけません。それが外注した場合、ジルコニアのクラウンをステインして綺麗な状態にしても8000円なんです。クオリティの良し悪しは別として、倍の金額を出せばそういうものが出来るようになってきています。歯科技工所さんもかなり多岐にわたる歯科医院ニーズに応えられるようになってきましたので、ここまでは自分のところでやる、ここからは外注するという線引きをした方が良いのではないでしょうか。自由診療で1日5人ぐらいの患者さんのところは別ですが、私のところのように歯科技工士がおらず歯科医師一人で保険診療もやっているところになりますと、自分の時給を考えなければいけないですから。││実際に、小池歯科医院での線引きはどうされているのですか?小池 インレー、アンレーは大体1時間以内に出来上がりますので院内で作っています。クラウン以上になるとプロビジョナルまでは院内で、

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