Dentalism31号
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23 Dentalism 31 SUMMER 2018 歯周病菌により産生される硫化水素は口臭の原因となるだけでなく、歯周病を悪化させる要因の一つであることが知られている。口腔内の硫化水素濃度と歯周病の進行度には高い相関があり、患者の口腔内の硫化水素濃度を測定すれば、口臭や歯周病の程度を判定する指標にもなる。口腔内で検出される硫化水素は歯周病菌が作る硫化水素産生酵素により、主にシステインというアミノ酸から作られる。これらの酵素の反応機構の解明が硫化水素産生の根本的な理解につながると考えられていた。 そんな中、岩手医科大学薬学部の毛塚雄一郎助教、および野中孝昌教授らの研究グループは、健常者を含め多くの成人で検出される歯周病菌Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム ヌクレアタム)特有の硫化水素産生酵素Fn1055に着目。この酵素の立体構造と反応機構を解明したと発表した。酵素反応をミリ秒(1000分の1秒)オーダーで追跡し、この酵素がシステインから硫化水素とセリンを生成する反応機構が明らかになった。反応には酵素の構造変化を伴うことが強く示唆されたという。この研究結果は歯周病菌における硫化水素産生機構の理解につながるとともに、新たな洗口液成分の開発への期待がかかる。++HSCOO-NH3+HOCOO-NH3+H2OH2S システインセリン硫化水素+NHNOP+NHNOPCOOHOP+NHNOCOO+NHNOPCOOHSPLPa-アミノアクリル酸中間体Fn1055PLP-システインPLP-セリン①システイン結合③水付加②硫化水素脱離④セリン放出岩手医科大学薬学部薬科学講座構造生物薬学分野毛塚雄一郎 助教口臭の原因となる硫化水素を産生する酵素の立体構造と反応機構を解明。 健康日本21(第二次)推進専門委員会によると、平成28年度の健康寿命は男性が72・14歳、女性は74・49歳だった。これは3年ごとに実施される国民生活基礎調査をもとに、厚生労働科学研究チームが算出したもの。前回調査に比べ、男性が0・95年、女性が0・58年延伸した。 一方で、平均寿命と健康寿命の推移を見てみると、どちらも延伸しているが、その差をみると、22年時には男性が9・13年、女性が12・68年、28年時には男性が8・84年、女性が12・35年とわずかしか縮まっていないのが現状だ。日常生活に制限のある「不健康な期間」の拡大は、個人や家族の生活の質の低下を招くとともに、医療費や介護給付費などの社会保障費の増大にもつながる。国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口によれば、今後も平均寿命は延びていくことが予測されており、その延び以上に健康寿命を延ばすことが重要だ。歯科では、8020運動のさらなる推進はもちろん、う蝕や歯周病予防の啓発活動に力を入れていかなければならないだろう。高齢化社会においての歯科の役割は大きい。平成28年度の健康寿命最新値を公表。平均寿命との差を縮めることが重要。平成22年平成25年平成28年79.5579.5570.4270.429.13年9.13年80.2180.2171.1971.199.02年9.02年80.9880.9870.1470.148.84年8.84年86.3086.3073.6273.6212.68年12.68年86.6186.6174.2174.2112.40年12.40年87.1487.1474.7974.7912.35年12.35年男性平成22年平成25年平成28年女性■健康寿命と平均寿命の推移平均寿命平均寿命健康寿命健康寿命78.0478.0469.4069.4078.6478.6469.4769.4779.1979.1970.3370.3379.5579.5570.4270.4280.2180.2171.1971.1980.9880.9872.1472.1484.9384.9372.6572.6585.5685.5672.6972.6985.9985.9973.3673.3686.3086.3073.6273.6286.6186.6174.2174.2187.1487.1474.7974.79男性平成13年908580757065(年)13年19年22年25年28年女性平成13年908580757065(年)13年19年22年25年28年

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