Dentalism31号
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Dentalism 31 SUMMER 2018 8に考えられたものなんです。じゃあ歯科だって何かあってもいいんじゃないかと。それで、歯周病に関連した全身的な疾患の総称としてペリオドンタルシンドロームというのはどうかと思い、臨床歯周病学会の理事会で提案したのが始まりです。歯周病の怖さをもっと国民の皆さんに知ってもらうために、ペリオと言えば歯周病に関連した病気なんだということが分かればいいですね。少しずつ広まりつつあるのですが、もっともっと広めたいと思っています。││歯周病予防には歯科医院で行うプロケアも大切ですが、患者さん自身によるホームケアも大切ですよね。若林 もちろんそうです。歯周病予防のベースはご家庭でのホームケアです。ただ、患者さんのマインドをチェンジさせることが一番難しい。だから私は歯磨きの技術的な指導はもちろん、患者さんの頭の中を変えるようなカウンセリングを重視しているんです。患者さんによって価値観は人さまざまなので、どの部分をつついたら意識を変えてもらえるのかは皆さん違います。例えば、高齢者の方であれば食べられなくなる苦しさや食べる楽しみといったところでアプローチしてみたり、若い人であれば審美的な面や口臭の面でアプローチしてみたり、カウンセリングで患者さんが発した言葉から糸口を見つけてその後の診療につなげていくんです。ある意味、心理カウンセラーのような人を診る目を養わないといけないですね。また、メンテナンスも大事ですが、それ以上に大切なのが食生活を中心とした生活習慣だと思います。むし歯の予防には歯磨きやフロスだけでなく、シュガーコントロールが重要なんです。どれだけメンテナンスをしていても砂糖を摂りすぎるとむし歯になってしまいます。砂糖のせいで体の中の白血球の貪食する力が下がって菌を殺せなくなりますから。むし歯や歯周病と糖尿病の関係もそうだと思います。ですから、極端には難しいでしょうが、ある程度の食生活の指導も必要になってくるでしょうね。││歯周病治療には歯科医師はもちろん歯科衛生士のレベルアップも必要だと思います。若林 スケーリングやルートプレーニングといった歯周病治療や予防の処置を考えれば、歯科衛生士の存在がもの凄く大きい。歯科医師だけでは歯周病の治療は出来ないんです。しかし、歯科界の現状では、待遇が良くないとかで歯科衛生士が集まらない歯科医院が多いと聞きます。それは東京や大阪であったとしてもです。そういった歯科医院は歯周病治療をしっかりしようと思っても出来ないのが現状ではないでしょうか。││一方で、貴院のように歯科衛生士を多く抱えている歯科医院もあります。歯科衛生士が集まり、定着する歯科医院はどう違うのでしょうか?若林 もちろん給与や休暇などの待遇面は大切です。しかし、それだけではないと思うのです。歯科衛生士がどれだけやりがいを持って働けるかが重要なのではないでしょうか。それにはしっかりとした教育とシステム構築、院長の配慮が必要だと思います。││若林先生のクリニックではどういうことをされているのですか?若林 実際の教育ということで言えば、患者さんの前に出る前に、模型を使ってビデオを見ながらの研修をします。ただ、一番大切なのは現場で患者さんと相対したときにしっかりとした衛生指導ができるかどうか。当院では、まず最初は軽症の患者さんを担当させます。術前術後のスライドを撮影して歯科衛生士から患者さんに「こんなに良くなりましたよ」とプレゼンテーションをさせるんです。そうすると、歯科衛生士自身でも良くなっていることを実感できるし、達成感やモチベーションにも繋がるでしょう。患者さんに感謝されることが歯科衛生士さんたちも嬉しいんです。そういう風に徐々に重症の患者さんを担当するように移行していってトレーニングと経験を積ませるんです。もちろん、私やベテランの歯科衛生士たちの的確な指導も必要です。3年ぐらいすれば色んな患者さんを任せられるようになりますね。││やりがいやモチベーションというのは大切ですね。若林 やはり仕事ですから、そこは重要だと思います。大きな声では言えませんが、うちは決して給料が高いわけじゃないんです(笑)給料はそこそこでもやりがいのある仕事ができるということで歯科衛生士さんたちが集まってきてく

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