Dentalism30号
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Dentalism 30 SPRING 2018 18んの負担も減るということになります。現在、スメア層除去に使用されているEDTAなどの代わりにも使えますし、価格も同じぐらいになるのではないでしょうか。ただ、医療品として薬事承認を受けて販売するには時間もかかりますしお金もかかりますので、雑品として製品化を進めております。ただの水ですので安全性での心配はないと思いますが、研究者としてはしっかりとしたものをお届けしたいので、臨床研究で効果を正式に示してからと考えております。あくまで雑品ですので、自費診療の範囲の中で、患者さんの許可を得てご使用されることになると思われますが。――課題も解決できそうということですね。歯髄幹細胞での歯髄再生医療の実用化への道のりは?中島 まずはナノバブルでの除菌の有効性を確かめ、自家歯髄幹細胞移植による歯髄再生治療の臨床研究をあと10〜20例ほど実施してということになるでしょうか。歯髄幹細胞の加工と保存、そして歯科医院へ提供するバンキングシステムもあと数年ほどで構築できる予定ですから、自費診療で歯髄再生治療ができるようになるのもそう先の話ではないと思います。ただ、これまで患者さん自身の歯髄幹細胞を使うことを前提に話をしてきましたが、そもそも高齢の方には細胞自体が少ないですし質が悪いことも考えられます。高齢でなくとも自家細胞を使うとなると、安全性や有効性を一回一回検査でチェックしなければいけなくなりますので手間やお金がかかります。そういう意味では、将来的に同種の細胞を使うことも考えていかなくてはならなくなるでしょう。私どもが実施した犬での研究では、同種の細胞を使っても問題はございませんでしたが、これはまだ可能性ですのでさらなる臨床研究を進めていかなくてはいけないと思っています。ただ、自分のものではない細胞を歯に移植するということを患者さん自身がどう考えるかという問題はありますが。――細胞バンクが一般化して、加工や保存、運搬までをシステマティックに出来るようになると価格もリーズナブルになってくるのではないですか?中島 そうですね。一般的に広まっていけば、若いときに自分の細胞を保存しておいて、いざとなったら使うこともできるようになると思います。――歯髄幹細胞は歯髄に再生だけでなく、他の全身疾患にも有効だと聞いています。中島 動物実験では脳梗塞や脊髄損傷による運動麻痺や末梢神経麻痺を治すことができるということも立証されました。また、アルツハイマーの原因であるアミロイドβを分解する因子を歯髄幹細胞が出しているということもわかっています。――再生医療では、骨髄や脂肪、臍帯血など他の幹細胞を使った臨床や研究も行われていますが?中島 幹細胞と言っても、その種類によって得意とするものが違います。例えば、神経や血管を作る細胞を誘導するという意味では、他の幹細胞より歯髄幹細胞の方が良い結果を得られています。しかし、骨を作る細胞を誘導するという意味では、脂肪の幹細胞の方が良い結果を得られています。このように疾患によって幹細胞を使い分けていくことが必要になるのではないでしょうか。――今後の実用化に向けての課題、展望をお聞かせください。中島 一番の課題は採算性にあると思います。脳梗塞による運動麻痺の治療ですと、自家の細胞を使うと費用が500万円などと言われています。もちろん使う細胞の量が全然違いますが、歯髄の再生に500万円は払えないと思います。このまま順調にいけば、テクニカル的な問題はなくなると思いますが、高額すぎて一般の方が享受できなければ意味がありません。研究だけで終わらるのではなく、しっかり実用化までもっていかなければならないと思っています。歯髄幹細胞を使った歯髄の再生を確立させることによって、歯髄喪失による負の連鎖を遮断する。そうなれば、歯の延命も出来ますし、ひいては健康長寿社会の実現への一助となるのではないでしょうか。それを信じて研究を進めて参ります。歯髄幹細胞による歯髄再生。歯髄再生の革新的技術とは。歯髄幹細胞を用いた歯髄・象牙質再生治療法6か月~12か月仮歯レジンセメント移植幹細胞+G-CSF再生歯髄冠部被蓋象牙質再生

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