Dentalism30号
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注目の歯科医師インタビュー9 Dentalism 30 SPRING 2018Prole 佐野正之(さの・まさゆき)1952年 富山県射水市生まれ1978年 城西歯科大学(現明海大学)歯学部卒1982年 同大学院修了1983年 富山県富山市にてあすなろ小児歯科医院開業日本小児歯科学会理事、明海大学歯学部小児歯科非常勤講師、新潟大学小児歯科非常勤講師、日本小児歯科専門医指導医、歯学博士あすなろ小児歯科医院富山県富山市栄町3-1-15蘂076-491-2422らうよりも衛生士にずっとメンテナンスしてもらって本来の自分の歯を保つ方がはるかに良いと思います。││あすなろ小児歯科医院には富山県の出生数の3割は来院されているとのことですが?佐野 毎日約300人、一カ月でのべ6000人ぐらい、年間7〜8万人の来院があります。││1日300人を診察していくのも大変ですね。佐野 治療になるとドクターとアシスタントで30分はかかりますが、うちの場合はほとんどがチェックアップの患者さんなので、その時間があれば歯科衛生士1人で3、4人は診れます。歯科衛生士1人あたり20人ぐらいの患者さんは診ています。うちの診療ではドクターが中心ではなく、歯科衛生士たちが中心なんです。それも予防歯科だからこそ。歯科の開業医には保険点数の在り方から削らないと経営が厳しいという発想が根底にあると思いますが、予防中心の診療でも十分やっていくことが出来るんです。予防は治療と違って終わりがありませんし、患者さんは1ヶ月に1回ぐらいは定期的にいらっしゃいます。実際、うちは3カ月先まで予約で埋まっておりますし、売り上げに変動もなく経営的にも安定しています。││これまでの歯科の在り方とは全然違いますね。佐野 根本的に違うと思います。今の歯科では、腕を磨いて良い材料を使って最高の治療をするのが名医だと言われています。でもそれは戦国時代で例えると、長篠の戦いにおける武田の騎馬軍団と同じ。最強と呼ばれた騎馬軍団が、撃てと言われてただ種子島銃を撃っているだけの織田軍の雑兵に完敗しました。それと同じで、歯科の中では予防が種子島銃になる。予防という観点では1人の名医よりシステム構築の方がはるかに大切になってくると思います。││社会もどんどん変わってきて予防を求めています。歯科医院も変わっていかなくてはいけないということですね。佐野 開業したころは3歳児のう蝕罹患率が90%を超えていましたが、今では20%を切るくらいにまでになりました。これからはもっと減っていくと思います。実際、うちの患者さんも18歳までカリエスフリーで、この子たちが大人になる10年20年には、今までの歯を削って神経を取るというような治療はほとんどいらなくなる。そういう時代が間違いなくやってきますし、歯科医はう蝕や歯周病を治すというだけではやっていけなくなると思います。最近、歯科は構造不況業種と言われていますが、もっと視野を広げていかなければいけません。例えば、うちでは鼻呼吸が苦手で口呼吸が癖になってしまっている赤ちゃんへの離乳食の与え方についてお母さんに指導していますが、う蝕の治療や予防以外にもアプローチできるところはまだまだあると思います。今、歯科界は転換期にあることは間違いありません。ネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、ピンチはチャンスです。発想の転換をしなければいけませんね。口腔環境の悪化は全身の病気につながります。子どものときから予防を身につけ、しっかり食べて会話していけば一生健康に生きられるはずです。「ものを噛んで食べる」。生きていくことのベースを歯科医はサポートしている。私にはそういう誇りがあります。一人でも多くの歯科医師がそういう意識を持って歯科医療に従事すれば歯科界も良い方向に変わっていくのではないでしょうか。 子どもたちのために何が出来るかを考え続けた結果、出来上がった「あすなろ王国」。予防を中心とした歯科医療に加え教育にも力を入れる。この視野の広さ、柔軟な考え方、そしてチャレンジする実行力で、あすなろ小児歯科院は富山県でなくてはならない存在になった。前人未踏の世界に勇気をもって踏み込んでいく氏の姿は多くの人のお手本になるのではないだろうか。

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