Dentalism29号
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取材・文/丹羽麻理 撮影/中島繁樹「生き方」が選べる未来を創るために、在宅医療に新機軸を打ち出す革新者。――在宅療養支援診療所が定義された2006年、東京大学大学院を中退し、採用が決まっていたマッキンゼー・アンド・カンパニーへの入社を取りやめ、在宅医療の世界に飛び込んだわけですが、現在の景色は、10年前に想像していた通りでしたか?佐々木 10年前はもっと地域で在宅医療が広がっていると思っていましたが、実際には、まだまだ乗り越えなければいけない課題がいろいろあります。 一つは医療者の確保です。みんな病院で働くことが普通だと思っているし、未だに在宅医療はよくわからないと思われているので、この業界、在宅医療の領域に来てくれる医師はまだ多くない。もちろん教育もしていくのですが、あ1都3県で10拠点を擁し注目される首都圏最大の在宅専門医療機関、医療法人社団悠翔会(以下・悠翔会)は昨年10周年を迎えた。グループを率いてきた佐々木淳氏は、在宅医療支援を中核とする事業の展開や、ヘルスケア分野の社会的課題の解決も目指す。医師として今でも200名の患者を担当しながら、医療と介護の未来を大きく拓いてきた氏に、歯科はどのように映っているのか。来たる多死時代を目前に、歯科の役割はどのように変革していくべきなのだろうか。そのヒントに迫るべく、新橋の法人本部に伺った。Special Interviewお医者さんの話を聞いてみよう!医療法人社団悠翔会 理事長・医師佐々木 淳Jun Sasakiる程度、適性の必要な領域なので、関心の無い人や価値観が理解できない人では難しい。 もう一つは、地域の人たちの意識です。「家で死にたい」と言う人は増えましたが、最後の最後まで家に居ようと本気で決断できる人はまだ少ない。医師も患者も病院があれば安心という病院信仰も強い。だけど高齢者の場合、病院に行けば命は助かるかもしれないけれど入院関連機能障害となり、認知症が進んだり、寝たきりになったりして、最終的には生きているんだか生かされているんだかわからない状態で人生の最後を迎える人も多い。自宅で最期を迎えたいという人は多いのに、実際は8割以上が病院や高齢者施設で亡くなっています。Prole 佐々木 淳(ささき・じゅん)医療法人社団悠翔会理事長・医師1975年京都府生まれ。1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。2006年MRCビルクリニックを設立。2008年同クリニックを医療法人社団悠翔会に改め理事長に就任。24時間365日対応の在宅総合診療を展開。関連会社には、在宅管理部門のMS法人、株式会社ヒューマンライフ・マネジメント、在宅医療に特化した電子カルテシステムの開発・販売を行う在宅医療情報システム株式会社、コールセンター機能のある沖縄在宅医療情報システム株式会社などがある。 Dentalism 29 WINTER 2017 12

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