Dentalism29号
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注目の歯科医師インタビューです。歯周病菌に対して抗菌性があるヨーグルトはあるかもしれませんが、菌は死んでも毒素は残ります。毒素が歯茎の組織に残っている状態で歯周炎が続くと、それが助長されて歯周疾患になり全身疾患に波及していくんです。だから毒素を不活性化することができるということは非常に大切なんです。││「8020ヨーグルト」を食べるタイミングはいつがよろしいのですか? また、食べる回数は多い方が良いのですか?二川 朝や昼に歯磨きをした後に食べた方が効果的だと思います。歯磨きをした後にマウスウォッシュをした方が良いように、バイオフィルムを出来るだけ壊してからヨーグルトを摂取した方が良いのです。ただ、夜寝る前の歯磨き後はおすすめしません。就寝時は唾液の分泌が減って口の中が酸性のままになります。エナメル質全体が溶けていく酸蝕症になる可能性がありますので避けた方が良いでしょう。日中であれば、最初は若干酸性に傾くと思いますが、喋ったりすることで唾液がどんどん分泌されて中和されるので心配ありません。食べる回数は1日1個で十分だと思います。││「8020ヨーグルト」の反響はどうですか?二川 おかげさまで好評をいただいておりまして、もともと中国、四国地方で販売していたのですが、関西や関東の特定のスーパーでも取扱われるようになりました。さらに、重症の歯周病に罹患していた『三井物産』の関西支社の方が「8020ヨーグルト」を半年間毎日食べて歯科医師が驚くほどの改善効果があったそうで、それが縁で『三井物産』さんとライセンス契約を結ぶことになりまして、タブレット菓子やチョコレートを『UHA味覚糖』さんから発売しています。今後はキャンディー、グミ、ガムなどの商品開発をしていきたいですね。アジアなど海外へにも展開して「食べてむし歯や歯周病を防ぐ」ということが広まっていけば嬉しいです。││食べる物で口腔環境を改善していくという観点はこれまであまりなかった気がします。予防というより未病という観点ですね。二川 人間が発育していく中で、口腔内常在細菌叢がどういう風に食習慣で変わっていくのかはほとんど分かっていません。口の中の細菌の数は種類で言うと700〜800種類、唾液1ccに1億個の菌がいると言われています。常在菌を良い具合に保ってくれる食べ物は他にもあると思いますから今後の研究で明らかにしていきたいですね。そのうちに食生活でオーラルフローラをコントロールしていく時代が来るのではないでしょうか。││そうなってくると歯科医師の在り方自体も変わってくる気がすますね。二川 今までは歯科医師はどちらかというと腕自慢の面があったと思うんです。特に補綴では「削ってこんないい物を作りましたよ」と、「先生、上手です」みたいな感じで。しかし、そういう物もいつかはダメになるんです。せっかく良い物を入れたんだったら長い間もたすために菌をコントロールして感染症を抑えるようにしていかなければいけないですね。 また、日本国民の口腔環境への意識は昔より上がってきていると思います。子供のむし歯数も着実に減少してきていますし。これまでは歯科医院ではむし歯や歯周病に罹患した人を治療するのが主でしたが、これからは予防や未病にシフトしていかなければ歯科業界は苦しいでしょうね。ただ、削って詰めないと診療報酬が出ないという保険制度のせいもあり、予防歯科だけでは食べていけないのが現状11 Dentalism 29 WINTER 2017です。明日から1割負担が2割負担になるだけで悪い夢をみる先生が大半でしょう。患者さんが来なくなるということに戦々恐々としています。昭和から続いた、むし歯が多くて歯医者を増やして治療しないといけないという頃から時代は変わりました。歯科医師も見方や考え方を変えていかないと立ち行かなくなるのではないでしょうか。国もいつか大なたを振るわないといけない時がくると思います。 口腔内細菌からのアプローチで口腔環境の改善を目指す二川先生。これからの歯科界を見据え、歯科医師として研究者として患者、ひいてはむし歯や歯周病に向き合う姿に、「未来を切り拓いていく」という強い信念を感じました。「研究者として世の中に役立つものを開発していきたい」と語る二川先生。Prole 二川浩樹(にかわ・ひろき)1986年広島大学歯学部歯学科卒業後、同大学大学院に入学1990年広島大学大学院研究科修了、歯学博士となる2005年広島大学歯学部教授2008年広島大学口腔健康科学科長、歯学部長補佐。2012年広島大学歯学部副学部長2016年広島大学医歯薬保健学研究科副研究科長L8020菌の発見のほか固定化防菌剤「Etak」も開発。広島大学病院 歯科 口腔健康科広島県広島市南区霞1-2-3蘂082-257-5703

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