Dentalism29号
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ではないと思うのですが、薬はある悪い菌を退治しますが他の悪い菌がはびこるリスクもあるわけです。もちろん薬のベクトルも大切です。しかし、副作用等もありますからずっと飲み続けるわけにはいきませんし、一時的なもので投薬をやめると元に戻る可能性や菌交代現象を起こす可能性もあります。その点、乳酸菌は薬と違い常在細菌叢へのアプローチで、悪い菌を攻撃するわけではなくて口の中に良い菌を取り込ませることでリスクを減らそうという概念なんです。 さらにL8020菌のメリットとして、ロイテリ菌などとは違い、歯周病菌が持っている内毒素であるLPS(リポポリサッカライド)を不活性化させる物質を出すんずなのに2,3年でダメになってしまう。それで障害者の口腔内のコントロールできる何かを開発できないかと考えるようになったんです。 そのうちに入院患者さんの中に、十分な歯磨きが出来ていないにもかかわらずむし歯になったことがない方と出会いました。唾液の性質が良かったり歯自体が強いなど原因が考えられますが、大学で微生物の研究をしていたこともあり、むし歯菌抑制効果の強い乳酸菌がいるのではないかと。その方に唾液をもらって調べてみたところ、2株ほどプロデンティスというミュータンス菌を抑える作用、いわゆる不溶性グルカンを作るグリコシルトランスフェラーゼの産生を抑える作用をもった乳酸菌を見つけたんです。菌種同定したところ、ラクトバチルスロイテリ菌でした。││乳酸菌と言えば細菌は腸内環境を整えるということで話題ですが、口腔内にも良い効果があるのですね?二川 当時はまだプロバイオティクスという言葉もほとんど普及していませんでしたが、乳酸菌を使って腸内の善玉菌を増やして悪玉菌を減らすというような効果があると言われていました。それで、腸内のように口腔内の細菌をコントロールできないかと考えたんです。口の中で悪玉菌と言えばむし歯の原因であるミュータンス菌や歯周病関連菌ですが、それらを減らすために乳酸菌を使ってみようと。なぜ乳酸菌だったかというと、乳酸菌は口腔内常在細菌叢、いわゆるオーラルフローラのメンバーということ。あと、食経験が豊富だということです。食べ物にするという意義は大きく、先ほども申し上げましたが障害者の方に歯磨きをして下さいと言ってもなかなか難しい。ご家族の方も介護するだけで精一杯だと思います。それであれば食べてむし歯や歯周病のリスクを減らすことができないだろうかと考えたんです。 乳酸菌を含んだ食べ物は色々ありますが、ヨーグルトは形状的に口の中に長時間滞在します。昔はそれが歯に悪いと言われていましたが、逆に考えると良い菌を含んだヨーグルトであれば口の中で長時間滞留してくれた方が好都合なわけです。││商品化にはご苦労も多かったのではないですか?二川 そうですね。最初は地元の『チチヤス乳業』さんと共同研究をしていたのですが、スウェーデンの企業に特許を取られ、一度断念しました。しかし、私の教え子や歯科医師会の友達などから「あのヨーグルトはもうないのか?」と聞かれることが多くなりまして、もう一度、口腔環境を良くするヨーグルトを作ろうと。大学生を集めてバイオテクノロジークラブを作って細胞や微生物の研究を再開したんです。 ロイテリ菌の研究のときは残念なことがありまして、ロイテリ菌がなぜむし歯菌を抑えるのかというメカニズムがわからず、抗菌物質に辿り着くことができていませんでした。商品自体も歯に良いという打ち出しで販売されていたわけではなかったですし。それで今回は抗菌物質を絶対に見つけようということで、ゲノム解析を用いてラクトバチルス・ラムノーザスKO3株を見つけたんです。ラクトバチルスの頭文字のLと8020運動を組み合わせてL8020菌と名付けました。││L8020菌と他の乳酸菌、もしくは市販の薬との違いは何なのですか?二川 本来は薬と比較すべきもの Dentalism 29 WINTER 2017 10ヨーグルト、タブレット菓子、チョコレート、マウスウォッシュなど、L8020菌のライセンス商品は多数。
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