Dentalism 28号
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Dentalism 28 AUTUMN 2017 26Medical Tribune紙:1968年にわが国で唯一の週刊医学新聞として創刊されました。各種医学会取材による最新医学情報をはじめ、専門家へのインタビュー記事、解説記事など、研究や日常診療に役立つ情報を提供しているジャーナル平均寿命、健康寿命ともに格差拡大 野村氏らはGBD 2015のデータを用い、1990〜2015年の疾病負担の都道府県別動向をシステマチックに解析した。解析項目は死亡率および死因、平均寿命、健康寿命(HALE)、損失生存年数(YLL)、障害生存年数(YLD)、障害調整生存年(DALY)、寄与リスクなどとし、国・都道府県レベルでの推移、都道府県間最大格差の変化を検討した。 その結果、1990〜2015年に平均寿命は日本全体で79・0歳〔95%不確実性区間(UI)79・0〜79・0〕から83・2歳(同83・1〜83・2)へと4・2歳延伸し、都道府県別に見た延長幅の最大は佐賀県の4・8歳、最小は沖縄県の3・2歳であった。平均寿命の都道府県間の最大格差は1990年の2・5歳から2015年には3・1歳に拡大していた(図)。 1990〜2015年における健康寿命は70・4歳(95%UI 67・8〜72・6)から73・9歳(同71・3〜76・3)に3・5歳延伸しており、平均寿命の伸び率をほぼ反映していた。健康寿命の都道府県間の最大格差は2・3歳から2・7歳へと拡大していた。 同期間の年齢標準化死亡率は全体で29・0%(95%UI 28・7〜29・3%)低下しており、都道府県別では沖縄県の最小22・0%(同20・1〜24・0%)から滋賀県の最大32・4%(同30・0〜34・8%)まで大きなばらつきが見られた。 年齢標準化DALYは全体で19・8%(95%UI 17・9〜22・0%)減少していたが、年齢標準化YLLの減少率は33・4%(同33・0〜33・8%)と大きく、早死が相対的に大きく減少したことを示していた。これに対し、年齢標準化YLDの減少率は3・5%(同2・6〜4・3%)にとどまっていた。アルツハイマー病では死亡率が上昇 1990年の三大死因は脳血管疾患、虚血性心疾患、下気道感染症で、2015年でも変化はなかったが、疾患別の年齢標準化死亡率は1990年と比べていずれも大きく低下していた。ただし、これら三大疾患をはじめ多くの疾患で死亡率低下の程度は2005年以降鈍化しており、DALYについても同様の鈍化傾向が認められた。 死亡原因上位10疾患の中で1990年以降の平均寿命、都道府県間の格差拡大世界疾病負担研究(GBD)20152005年以降の疾患別年齢標準化死亡率が有意に上昇していたのは〝アルツハイマー病および他の認知症〞のみであった。 次に、都道府県別に2015年の疾患別年齢標準化死亡率を見ると、脳血管疾患による死亡率は岩手県の62・0(人口10万人対、以下同様)に対して滋賀県では37・9、虚血性心疾患による死亡率は埼玉県の55・0に対して熊本県では35・9と、都道府県間の格差は極めて大きいことが明らかになった。医療費や医師数は格差と相関せず 野村氏らは、こうした格差を生む要因を探るため、保健医療システムのインプット(1人当たりの医療費、人口10万人当たりの医師数、看護師数、保健師数)と保健アウトカム(年齢標準化死亡率、DALY)との関連について単変量リニア回帰分析を用いて検討したが、インプットとして設定した4項目のいずれにおいても保健アウトカムとの有意な相関は見られなかった。 同氏らは「日本は1990年から2015年にかけて大半の予防 東京大学大学院国際保健政策学教室の野村周平氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2015におけるわが国のデータを解析し「1990年以降の25年間で平均寿命および健康寿命の都道府県間の最大格差が拡大していたが、保健医療システムの予算および人的資源との関連は示されなかった。社会の超高齢化が進む中で健康転換(左ページ「健康転換」参照)が進展し、各種健康指標で見た地域間格差が拡大しているわが国の現状は、都道府県ごとに保健医療システムの成果を再検証する必要性を示唆している」とLancet(2017年7月19日オンライン版)で報告した

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