Dentalism 28号
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塙 「SIインデックス」の使用で、ヘルスケアゼロの目標を簡単に提示でき、医療とは違う分野の方にも、自分たちの取り組みに価値があることを知っていただく指標になっています。伝多朗 最後に「弁当プロジェクト」について教えて下さい。塙 弁当の中に「食のユニバーサルデザイン」のノウハウを詰め込み、食べる機能を育て、維持し、補助することを目指すプロジェクトです。食形態への配慮はもちろんですが、色覚の多様性に配慮したカラーユニバーサルデザインの考え方を取り入れたり、調味料入れや弁当箱の使いやすさを点検したりして、食べる環境にも考慮しています。また「噛むかむ弁当」、「だしを味わう」などと名付けることで、ラべリング効果を期待するなど、多彩な取り組みを凝縮しています。全ての活動が、様々な方とのご縁によって実現しています。誰が欠けても、このようにはならなかったと思いますし感謝しています。伝多朗 先生の優しさと、人を引き寄せ、ご縁をつなぐ力の賜物でしょうね。今後益々のご活躍を祈念しています。25 Dentalism 28 AUTUMN 2017レストランモン・ラパン茨城県笠間市笠間1150蘂0296-73-0020休/火曜日・第1月曜日糖尿病性腎症や腎臓病、嚥下食など、どんどん増えていくリクエストも全てクリアして進化しています。伝多朗 県の窯業指導所や地元作家さんの協力を得ながら、笠間焼でユニバーサルデザインの器づくりも行い、食べる機能を補助する器も多数生まれているようですね。塙 これは往診でパーキンソン病の患者さんと出会ったことがきっかけでした。いつも体が90度に曲がっているため食事も手づかみだと言うのです。そこで最初にやったのはスプーン曲げでした。でもすくえるお皿がなかったので、知り合いの陶芸家に使いやすい皿を作ってもらい、出来上がったものを窯業指導所に持っていきました。そうしたところ商品開発研究会を作るという話になったのです。伝多朗 よい道具によって食べる機能が補われることで、食べる意欲も高まり、食生活の質も高まりますね。塙先生は、Dr.ビーチが提唱する「0(ゼロ)の概念」に基づいた健康志向型記録方式「SIインデックス」を、「楽食」の活動の位置づけにも利用されているようですね。たんぱく質の摂取量を調整する必要のある人には、通常の1/20に抑えられている「アプロテンスパゲッティ」を使用。真鯛と豚ロース、たっぷりの野菜を使ったメイン料理は190kcal。様々な食感と、野菜と茸のソースの深い味わいが楽しめる。嚥下食対応の場合は、真空低温調理法により、赤身肉などは旨みや形状はそのままに、舌で簡単につぶせるほどの柔らかさに。シフォンケーキ、いちごのシャーベット、メロンやオレンジ、グレープフルーツなど彩り豊かにあしらったデザートは123kcal。①『モン・ラパン』の「楽食」コースには、食のカルテが添えられる。エネルギー量、たんぱく質や脂質などの栄養素、食塩相当量などが、メニューごとに細かく算出されている。②「色のシミュレーター」というアプリで、様々な色覚者による料理の色合いをチェックする塙先生。③ストローを刺せる場所が固定されている笠間焼のカップ。④鳥の胴体部分でスプーンがとまり料理がすくいやすい笠間焼のその名も「とり皿」。佐山博昭(さやま・ひろあき)シェフ都内ホテル勤務を経て1976年渡欧。1991年茨城県にてレストラン『モン・ラパン』開店。2000年笠間市に新築移転オープン。「食のカルテ」の提供と共に、食のユニバーサルデザインを実践している。①②③④①

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