Dentalism 27号
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5月21日に開かれた宮城県石巻市の「男の介護教室」。今回のゲスト講師のひとり大阪市西成区で「わたなべ往診歯科」を開業する渡邉充春さん(71)がマイクを握りました。彼は、東日本大震災の発災直後に被災地に飛び込んで炊き出しをおこない、崩壊した医療体制再建にも尽力し、その後も旺盛に支援活動を続けている歯科医師です。 講演テーマは「生活困窮者への歯科的支援 ―地域で暮らし、健康をみんなで支え合う― 釜ヶ崎で往診歯科を開設して」。彼は、日本最大のドヤ街・寄せ場(日雇労働者の就労場所)である大阪・西成区の「あいりん地区」の労働者やホームレス(野宿生活者)の健康と生活を守り自立を支援する活動に全力を傾けています。現在、あいりん地区には面積0・62km2の中に2万5千人が暮らし、高齢化率も全国平均を10%上回っています。 開業は7年前の2010年4月、65歳のチャレンジでした。午前中は外来診療で4割は車イス、6割が生活保護の患者です。午後は訪問診療で月曜と火曜日は5時から7時まで夜間診療も行っています。保険証のない人や経済的に困窮している人には無料で診療もしています。「行くところがなくてやっとたどり着いたという方もおられます」と渡邉さん。他にも、ホームレスの自立支援や震災被災地支援、HIV・LGBT支援、さらにハンセン病患者の帰郷運動など幅広い活動に取り組んでいます。 「ホームレスの健康、栄養調査も行いましたが、痩せている、重症高血圧者は4倍以上、貧血傾向など、一般の同世代の人と比べて健康が阻害された人が多く、それは医療、住居、食事といった基本的ニーズが充足されていないことが原因です。日本でも、医療制度のはざまのなかでそこから外れている人、満足に医療を受けられない人がたくさんいることを忘れてはならないと思います。みんなが人間らしく幸せに生きられる社会を作るためにこれからもがんばっていきます!」。渡邉さんは「歯科医師としてやるべき課題は山ほどありますよ〜!」とさらに熱く語りました。みんなが幸せになる社会めざして 文・菊池恩恵[デンタリズム]http://www.dentalism.jp発行人/寺西秀樹編集人/丹羽麻理発行所/株式会社 金沢倶楽部〒100-0006東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館6階 LEAGUE有楽町TEL 03-6268-0718FAX 03-6268-0717■編集後記男の介護教室の河瀬代表〈左)と。男の介護教室で講演する渡邉さん。菊池恩恵(きくち・めぐみ)1953年岩手県出身。歯科医院の経営を支援する株式会社コムネット代表。http://comnt.co.jp/歯科業界のコミュニケーションマガジン『Dentalism(デンタリズム)』は、第26号も多くの皆様から反響をいただきました。その中の一部をご紹介いたします。「医科の先生を取材したコーナーは、毎回、興味深く拝読しております。今回の荒金先生の取り組みにも、非常に刺激を受けました。あいうべ体操の今井先生や、糖尿病専門医の西田亙先生など、今後も歯科が注目すべき旬の医師を教えて欲しいと思います」 群馬県 T歯科様バックナンバーの記事をご覧になったという方からのご意見や、同様の感想や激励を多数いただきます。また、各地で注目されている先生方の情報も寄せられるようになってきております。今後もメールやお電話にて、お気軽にご意見・情報をお寄せ下さい。「注目の歯科医師のコーナーや歯談・食談で紹介されている歯科の先生方に注目しています。凄い歯科医師は、都会だけに集中しているわけじゃないんですね。『デンタリズム』で、もっと大勢の歯医者さんのことを紹介して欲しいです」 富山県 K歯科様今号では「ちょっと気になる歯医者さん」として、新たな切り口で歯科医師にスポットライトをあてる企画を新設いたしました。今後も、一人でも多くの先生を紹介していきたいと考えております。「口腔フレイルや低栄養という言葉を見聞きする機会が増えてきました。直接的な歯科治療以外でも、注目すべき情報が多くなってきているように感じています」 東京都 M歯科様No. 27 SUMMER 2017 Dentalism 27 SUMMER 2017 32 神奈川県 S歯科様今号でもサルコペニア(低栄養)に関する記事をご紹介しております。「健康長寿を支え、牽引するのは歯科から」という考えも浸透しつつあります。今後も、そうした動きに注目して参りたいと思います。「日本歯科医師連盟の組織率が8割を切ったという記事があったが、 日歯会員数そのものが全歯科医師数の6割程度であることを考えると、日本歯科医師連盟は歯科医師全体の半数程度の声も反映されていないと思うのだが…」 東京都 K歯科様ご意見ありがとうございます。迂回寄付事件などの不祥事が続いた中で、これからの日本歯科医師連盟の在り方が会員数にも反映されていくのではないでしょうか。そのほか、今号も多くの皆様よりお電話やメールなどで、お問合せやご要望をいただきました。本当にありがとうございました。なお『デンタリズム』では、取材依頼や告知協力のご相談につきましても随時受け付けております。お電話またはホームページの問い合わせフォームよりご連絡ください。
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