Dentalism 27号
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す。私の場合は、イニシャルトリートメントでは95%、再治療でも79.8%。もちろん自由診療の方が治療費は高くなりますが、それでも自分の歯を残したいという患者さんに来ていただいているのではないでしょうか。││その高い成功率を誇る理由は何なのでしょうか?牛窪 やはりコンセプトをしっかり守ることですね。そして手順を守って丁寧に処置する。そんな当たり前のことなんです。もちろん日々の研鑽も必要です。スポーツでもそうですが、成績を残す人というのは練習をいっぱいしているんですよ。しかたり。一つの症例だけでなく、いくつも出てきました。それで根管治療をしっかりと学びたい、そして患者さんを治してあげたいという気持ちが高まってきたんです。それから色々なセミナーに参加し始めました。そこで知り合いになった先生からアメリカでの研修の話を聞き、行ったのがペンシルバニア大学のセミナーでした。そこでの講義や実習は今までの私の根管治療に対する考え方を変えるくらいの内容でしたね。その後、念願叶ってペンシルバニア大学に留学できることになり、さらに専門的に学ぶことができました。││具体的にどのようなことを学ばれたんですか?牛窪 とにもかくにも無菌的な治療が大切で、あらゆる方法で細菌を排除するということ。歯内療法の目的は、根尖性歯周炎の予防と治療で、その原因となる細菌を排除するために、機械的な拡大化学的洗浄、貼薬を行い、排除が不可能な細菌は根管充填により根管内に埋葬することが必要になります。そのために、どれぐらいの号数まで機械的拡大をさせるかとか、洗浄をどのようにするか、根管充填をどう行うかなどを学びました。もちろんテクニックも重要なんですが、一番大切なのは、これら全ての処置が無菌的環境で行われ、生物学的にも病理組織学的にも生体に安全であるというコンセプト(基本的な考え方)がしっかりしていること。その次に、色々な機材を使ったテクニックがある。それが日本では反対で、テクニック重視なんです。実際、日本では治らないと思われていた症例がアメリカでは抜歯しなくてもいい。歯が割れていない限りほとんどの症例で大丈夫でした。日本とアメリカでどうしてこれだけ差があるのかと。その違いを目の当たりにして、自分もそういう症例を治せる専門医になりたいと思ったわけです。││当時はまだ根管治療を専門に行っている歯科医院はあまりなかったのではないですか?牛窪 歯周治療や修復治療の専門医はいらっしゃったと思いますが、歯内治療の専門医はほとんどいなかったと思います。そういう部分では不安もありましたけど、根管治療の専門医という立場を確立したかったので、どうなるかわからないけどやってみようということで始めました。あと、抜歯は本当に最後の最後の手段で、出来るだけ患者さんの歯を残したいという思いが強くありました。インプラントを否定するつもりはありません。しかし、歯を抜かずにおいておけば、もちろん自分の歯で食べられるという患者さんの幸せもありますし、今問題になっている認知症を遅らせることもできます。歯の周りには靭帯があり、それはインプラントでは作れません。靭帯が存在するということはそこに細胞が生きているということ。細胞が存在すれば、咀嚼を効率的に行うことができますし、噛めば噛むほど脳に良い影響を及ぼします。だから、抜歯せずに治療できるということは非常に重要なんです。││保険診療ではなく自由診療の道を選ばれましたが、葛藤はありませんでしたか?牛窪 熟慮した結果、本当の根管治療を提供するために、自由診療を選択しました。ただ、保険診療で出来る内容のことを自由診療で行うわけなので、違いをどういう風に出せるのかを考えましたね。根管治療の自由診療というのは、ただ単に高性能な最新の機材を使うとか、診療に時間を十分確保するからという理由だけでは難しいと思います。では何で差別化を図るかと考えたときに、治療の成功率しかないんじゃないかと。日本の場合、保険診療では根管治療の成功率は40%ぐらいと言われていま Dentalism 27 SUMMER 2017 8新規、メンテナンスを含め、1日7~8人の患者さんを診察している。

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